203回整形外科リハビリテーション研究会報告

2012.02.18 於:名古屋会議室 名駅西口店


症例1 70歳代後半 男性 TKA術後車乗降時に右膝後外側部痛を呈した一症例

 現病歴は2011.6.21他院にて右TKA施行され7.21退院、8.1術後リハを希望され運動療法開始となった。既往歴は2009.1TKA施行されている。主訴は車乗降時のアクセル・ブレーキの踏みかえ時の右膝後外側部痛であった。初診時所見は膝ROM(右/左)、伸展0/5、屈曲130/130、腓腹筋タイトネス右>左であり、膝関節屈曲位での背屈角度に左右差なく、疼痛訴えた周囲での圧痛はなかった。股関節のMMTは腸腰筋が右2、左3であった。長時間歩行後は痛みが出やすい傾向があり脛骨を前方または内旋の動きをかけることで疼痛消失し、テーピングにてそれを誘導すると症状消失した。また、膝窩に指を入れて大腿二頭筋を外側にshiftするようにすると疼痛消失したとのことであった。そして、歩行や疼痛が出現する動作のビデオが流されたうえで検討がなされた。検討項目としては疼痛の解釈と足りない評価、治療方針であった。フロアの方からは疼痛に関しては大腿二頭筋のimpingeや膝後外側の組織の硬さからではないかとの意見があった。そして足りない評価は体幹、足関節、股関節のROMMMTのチェックや歩行時にknee-inが認められることからOber-test、外側膝蓋支帯やVLのチェックを行い、また大腿四頭筋の収縮で膝蓋骨がひけるか動きをみてはどうかとの意見が出された。治療方針としては、膝に関しては後方の硬さがあれば柔軟性を上げてやることや左膝と同程度の可動域の獲得、また股関節に関しては腸腰筋の筋力強化が必要ではないかとの意見が出た。総括は単純X線写真や人工関節の動きの違いや手術の侵襲、疼痛の解釈についてあった。今回は術前の単純X線写真がなかったが手術前後でFTAを比べることによりその変化において硬くなりそうな部位やlooseになりそうな部位を推察することが可能であるとの説明があった。また、人工膝関節の動きとしてTKAのコンポーネントの種類の拘束型では人工関節面に適合した関節運動を運動療法で行っていくようにと指摘された。また、非拘束型では手術侵襲により内側がタイトになりやすく膝の屈曲時に脛骨が外旋方向に入りやすくなるため徒手にて内旋方向に動きを出してやることが必要であるとの意見が出され、膝の運動学の必要性を再確認した。また、手術の骨の切除を行う時に膝の内側や後方の軟部組織を傷つけやすく、fibrosisなどが起きて痛みが出現してくる可能性があり、組織の修復過程を考えながら可動域を獲得していく必要があることが説明された。最終的な痛みの解釈は歩行時にMCL中心の膝が後外側に落ち込む動きとなっているため、動きを止めるように膝窩筋が働いており、二頭筋腱をshiftさせる操作は膝窩筋をストレッチする動きとなるため疼痛部位周辺の圧痛がなかったとのことであったが、丁寧に膝窩筋の圧痛をみていくようにとの指摘があり触診の大切さを再認識した。歩行時に膝が後外側に落ち込む動きに関しては脛骨を内旋方向に入れるような足底板をつくり、修復を待つのが良いとの意見がでた。また、車の運転に関しては足の置き方の指導や膝にサポーターを使用して脛骨が後外側に落ち込まないようにするなどの提案もあった。人工膝関節の機種の特徴や治癒過程などの基本的な知識を再確認した症例であった。

(文責 佐々木整形外科 村瀬代里子)


症例2 10歳代 男性 大腿四頭筋、FHL断裂に対し筋膜縫合およびFHL再建術を施行した症例 経過報告

本症例は14か月前に症例提示しご検討していただいたものであり、その経過報告を行った。症例は当時10代後半でサッカー部に所属する学生であった。天窓から左下肢が転落し、ガラスにより内側広筋(以下VM)、中間広筋(以下VI)の部分断裂、大腿直筋(以下RF)の完全断裂および長母趾屈筋腱(以下FHL)の完全断裂を呈した。救急にて他院に搬送され、同日VMVIRFに対する筋膜縫合およびFHL腱縫合術が施行された。なお、VMVIRFの筋腹縫合は行われなかった。術後4週はギプス固定し、4週よりシャーレ固定に移行した時期にリハビリ目的で当院を受診し理学療法を開始した。初診時の膝関節他動可動域は屈曲35°/ 伸展0°、でextension lag(以下lag)が20°、足関節他動可動域が背屈−10° / 底屈45°であった。大腿前面創は完全に癒合しておらず、強度に動かすと出血の可能性があった。大腿前面創、足関節内側創の皮下は著明な可動性低下、Kager’s fat padに著明な柔軟性低下を認めた。また、膝関節前面、足根管部から足底の知覚鈍麻を認めた。受傷後6週において、RF収縮時に膝蓋骨より近位約5cmの部位に著明な陥没を認めた。この時期の膝関節他動屈曲可動域は股関節屈曲位で80°、股関節伸展位で50°であり、足関節可動域には変化がなかった。受傷後8週では、膝関節他動屈曲角度が股関節屈曲位で110°、股関節伸展位で80°でありlagが消失し、足関節背屈角度が−5°となった。受傷後11週では膝関節屈曲角度が股関節屈曲位で150°、股関節伸展位で140°であった。受傷後611週は損傷部の修復を考慮するとともに、既存した癒着を剥離するべく大腿前面に対しては、皮膚・皮下の滑走操作、lift off操作、VI優位の軽い反復収縮、VIの横方向へのmobilizationを、足内側・アキレス腱周囲に対しては、皮膚・皮下の滑走操作、Kager’s fat pad mobilization、後脛骨筋、長趾屈筋、FHLの反復収縮(近位滑走)を行った。この時期にはFHLの遠位滑走は積極的には行わなかった。「受傷後411週の時期において膝関節屈曲可動域の改善を認めているが、RFVIが癒着していることによりRFの収縮能が向上しているとするならば、屈曲可動域の改善にともなってextension lagが急激に増大しないかどうか、注意して観察する必要がある」とのアドバイスをいただいた。また、この時期にご検討いただき、「FHLの遠位滑走は腱の修復期間を考慮しても積極的に出すべきではないか」とのご意見をいただき、受傷約3カ月以降からFHLの積極的な遠位滑走を行った。
 受傷5カ月より50Dush・ボールキックを、受傷6カ月より100%Dush・ロングボールキックを行ったが、練習後に大腿前面の疼痛が出現し、膝関節屈曲可動域の減少を認めていた。この時期に足底挿板を作成し、以降は膝周囲の疼痛がほぼ消失した。また、ロングボールの飛距離が低下しているとの訴えがあった。キック動作にはRFの筋活動が不可欠であり、本症例のごとくRFの断裂を呈している場合には代償動作が強いられる。この代償を腹筋群、腸腰筋、膝関節広筋群で行うべくエクササイズを指導した。受傷後8カ月ではチームに完全合流し、受傷後9カ月では試合への出場が可能となった。受傷後11カ月では自動でのSLRの筋力に左右差が残存するものの50m走のタイムも受傷前と同タイムとなり、トップチームへの昇格を果たした。
 本症例で最も困難であったのは受傷後46か月の時期であった。運動負荷レベルを上げていきたい時期であったが、負荷を強くすると外側組織の柔軟性が低下し、膝周囲の疼痛の出現を繰り返していた。これは、受傷部位が大腿中央から内側寄りであったため、VMの収縮力が低下し、動作時にVL優位の収縮となりやすいこと、足部が凹側傾向であり、元来より外側荷重の傾向が強いことによるものと推察した。そのため、膝外側支持機構の緊張改善を目的に足部の内側荷重を促したが、FHLの機能不全が存在し内側への荷重が困難な状況であった。そのため、足部内側での荷重を可能にする目的で足底挿板を作成し、FHLの滑走性改善と足関節背屈制限の除去を積極的に進めた。これらが奏功し、この時期以降での膝周囲の疼痛や可動域制限を認めにくくなったと考えている。
 エコー画像による大腿損傷部(陥没部位)の変化としては受傷後2カ月のものと16カ月のものを比較したものを提示した。16か月のものでは断裂部より遠位より近位方向に向かい、一部筋線維が回復している様子や、瘢痕組織が上手くVIRFなどと癒着形成し、合目目的に作用している様子がうかがわれ、関節の機能に合わせて組織が再構築されていく可能性があることを再認識した。しかし、本症例では断裂部中央長軸でしか撮影しておらず、瘢痕の全体像の把握が困難であることや、VMVIなどが受傷後2カ月とどのように変化して、現在の膝機能と結びついているかを考察するのには不十分であるとの指摘がされた。本症例だけではなく、エコーを使用する際は全体像を把握するため角度を変えて撮影し、いかに立体的に捉えられるかが重要であることを痛感した。

(文責:平針かとう整形外科 田中夏樹)