212回整形外科リハビリテーション研究会報告

2013.02.16 於:名古屋会議室 名駅西口店








症例1 30歳代 女性
−長母趾伸筋腱断裂縫合後の運動療法−

症例は30歳代前半の女性である。包丁で長母趾伸筋腱を切離し、受傷7日後に他院にて縫合術を施行された。術後2週間は足関節背屈0度・母趾MTP/IP関節屈伸中間位でギプス固定されその後5日間シーネ固定された後に、術後2週と5日後から運動療法が開始となった。術後4週までは、足関節最大背屈位での母趾MTP/IP関節の他動伸展と0度までの自動屈曲が許可された。術後6週までは、母趾最大伸展位での足関節自動底屈運動が許可された。術後7週以降は全荷重が許可され、足関節母趾MTP/IP関節の運動は無制限となった。全期間を通じて母指基節骨と長母趾伸筋腱の間に存在する瘢痕組織に対するモビライゼーションを中心に行った。可動域は、術後4週でMTP伸展20度、屈曲0度、IP伸展10度、屈曲0度、術後7週でMTP伸展60度、屈曲15度、IP伸展20度、屈曲10度、術後11週で、MTP伸展60度、屈曲30度、IP伸展20度、屈曲40度となった。術後12週にてextension lagなく、MTP屈曲30度、IP屈曲45度、跛行なく運動療法を終了した。

 腱縫合術後の運動療法のポイントは、腱の連続性を維持し抗張性と滑走性を維持・改善することである。さらに、腱の修復は瘢痕組織に進入する毛細血管を通じて行われるので、毛細血管を保護し腱修復を阻害せず進行させる必要がある。本症例の運動療法は、手の屈筋腱縫合後のクライナート法を参考に実施されていたが、報告当事者は、術後7週経過の時点で若干の可動域の進達の遅れを気にしていた様だが、荷重が許可されるこの時期にある程度の拘縮を残していた事が、その後の歩行により発生する張力に耐えうるだけの腱の抗張性が獲得できたのではないかと思われた。もし、この時期に十分すぎる遠位滑走が獲得されている事は、脆弱すぎる瘢痕組織の形成を意味し十分な腱の抗張性が得られない可能性があったのではないかと助言された。また、超音波画像では時系列で腱と骨の間に存在する瘢痕組織の柔軟性が徐々に改善していく映像が映し出された。治療としては、一貫して瘢痕組織の伸張性・柔軟性改善を目的に行われていた。具体的には、腱を最大近位滑走位にして瘢痕組織を両端から寄せるようにして持ち上げたり、横方向に動かしたりされていた。腱縫合後の運動療法では、瘢痕組織の適度な形成を促し血行を保護しつつも、瘢痕組織の伸張性・柔軟性改善を図ることが重要であると再認識した。
                      
(文責:平針かとう整形外科 岡西尚人)