223回整形外科リハビリテーション研究会報告

2014.1.18 於:国際医学技術専門学校 4F 講堂


症例1 
 
10代後半 女性 右鼡径部痛を呈するクラシックバレエダンサーの一症例

 症例の現病歴は、約2か月前からクラシックバレエの練習中に右鼡径部痛が出現した。他院を受診し、治療を受けていたが疼痛が残存するため、当院を受診した。MRIでは、右腸腰筋の腱周辺に浮腫状の変化を認める所見があった。

主訴は、バレエ動作の右股関節屈曲・外転+膝伸展(以下:右下肢挙上)時の右鼠径部痛である。また疼痛が強いときは歩行痛も出現するとのことであった。

理学所見では、座位で右股関節外転位での屈曲MMT2で疼痛が出現し、そこから膝を伸展させると疼痛の増強を認めた。また右股関節外転位での屈曲MMT時に、骨盤の後傾、腰椎の後彎が大きく、右肩甲骨がわずかにwingingしていた。そのため、体幹・肩甲骨周囲筋のMMTを評価した。MMTは、僧帽筋の中部、下部が左5に対して右4であった。体幹の屈曲位からの右回旋は5であったが、左回旋は4であった。

運動療法は右下肢挙上時の固定筋の筋力増強を目的に、右僧帽筋中部・下部の筋力トレーニング、腹斜筋の筋力トレーニングを実施し、運動療法直後は、右下肢挙上時の疼痛は軽減もしくは消失した。再来院時にはリバウンドを認め、また練習時間が長いと疼痛が増強する状態であった。

再評価時の疼痛は、MMTの右SLR70°で抵抗を加えると疼痛を認めた。その他には、右の開排動作時に疼痛を認め、仙腸関節を固定しても疼痛に変化は無かった。疼痛は全て右鼠径部に出現し、圧痛は右大腿直筋の起始部に認めた。また、右下肢挙上時に左足部の不安定性を認めたため、左足部、股関節の評価も行った。ROMは母趾MP関節の内反が左-5°右-8°、股関節外旋が屈伸0°位で左35°右50°であった。MMTFHLが左45であり、徒手的に横アーチを保持すると左5であった。整形外科テストでは、Ober testが左++右++であった。

運動療法は左下肢の支持性改善を目的に、左母趾MP関節内反可動域訓練、左母趾外転筋の筋力トレーニング、左大腿筋膜張筋のストレッチを追加し、運動療法直後は右下肢挙上時の疼痛は消失した。また大腿直筋の滑走性改善を目的に、外側方向へのglidingを施行し、開排の可動域は拡大した。

現在、右下肢挙上時の疼痛はリハビリ前でNRS12程度と軽減し、歩行時痛が出現することは無くなった。しかし右下肢挙上動作が行いにくいという訴えがある。

そこで、検討項目として、開排動作時の疼痛は大腿直筋の滑走性低下が原因で良いかという点と右下肢挙上動作の行いにくさを改善するために必要な評価項目という点を検討していただいた。

フロアーからは、鼠径部痛の評価を行なうこと(上位腰椎部由来・下位椎間関節由来・仙腸関節由来・股関節由来・股関節周囲筋由来)と、股関節の可動域を骨盤固定下と非固定下で行うこと、圧痛を詳細に行うことを指摘された。また、患部外の関節を治療することで、なぜ疼痛が軽減したのかを明確に示す必要性を指摘された。

有痛性疾患の治療では、まずは①疼痛発現部位を特定すること、②疼痛が炎症由来か拘縮由来か判断し、③局所の損傷を誘因する他部位の機能障害はどこかを探求する、という手順で治療を展開すると整理して考えることができる。その点で、今回は、局所の評価に正確性を欠けていた点と、患部の損傷を誘因する他部位との関連についての考察が不十分であった。

  

症例2 1代前半男性 
 腓腹筋起始腱膜と下腿筋膜との間での剥離型損傷と思われる肉離れの一症例

  肉離れの分類には、エコーやMRIを用いた分類があるが、その分類の中に腱膜と筋膜との間での剥離型損傷のような分類がされている文献は見当たらないため、本症例は稀な損傷形態と思い、報告させていただいた。

 現病歴は、玄関の段差を昇段した際、左下腿後面に疼痛が出現した。当日当院を受診し、左腓腹筋肉離れと診断され、弾包固定と両松葉杖を施行された。受診から1週間後より運動療法開始となった。初診時のエコー画像では腓腹筋内側頭の起始腱膜と下腿筋膜との間に高エコー像の血腫を確認した。

運動療法開始時の理学所見では、ROMは膝屈曲120°p膝伸展-45°p足関節背屈-10°pであった。MMTは足関節底屈2pであり、疼痛はすべて腓腹筋内側頭に出現し、圧痛も同部位に認めた。足関節底屈MMT時の疼痛は、弾包にて疼痛部位を圧迫すると軽減し、疼痛部位より遠位部を圧迫しても軽減した。運動療法開始時のエコー画像では、腓腹筋内側頭の起始腱膜と下腿筋膜との間に低エコー像の血腫を確認した。

運動療法は、ホットパック、腓腹筋の筋収縮訓練、腓腹筋内側頭の患部より遠位部のストレッチ、踵に補高、ADLで弾包指導、エルゴメーターを実施した。

運動療法を開始して1週間後、弾包圧迫下では補高無しでも歩行時痛は無く独歩可能となった。ROMの膝関節は改善、足関節背屈は膝伸展位で0°p、膝屈曲位で20°pMMTは足関節底屈2pであった。圧痛は運動療法開始時と同様に認めた。

2週間後、60%で走行可能、ROMの足関節背屈は膝伸展位で6°p±、膝屈曲位は改善、MMTは足関節底屈4、圧痛は同様に認めた。

3週間後、疼痛無くスポーツ復帰、足関節背屈の可動域は改善、MMTは足関節底屈5、圧痛は消失した。エコー画像では、腓腹筋内側頭の起始腱膜と下腿筋膜との間に高エコー像の血腫を確認し、また血腫の範囲は狭小化していた。

考察、本症例はエコー画像より腓腹筋内側頭起始腱膜と下腿筋膜との間に血腫を認め、同部位の剥離型損傷と思われる。そのため患部に離開ストレスが加わらないように、運動療法は、患部より遠位部の腓腹筋内側頭のストレッチ、弾包指導を行なった。また、筋力低下の予防と循環を促し血腫の吸収を促進する目的で補高を施行した。結果、血腫は完全には吸収されなかったが、範囲は狭小化し瘢痕化していた。また、血腫の瘢痕が完成するまでに可動域や筋力の改善を行なえたことで、支障無くスポーツ復帰が行なえたと考えた。

フロアーからは、①血腫のエコー画像では、なぜ初期では高エコー像、中期では低エコー像、最終では高エコー像に変化するのか。②エコー画像を用いて、何を診てどう運動療法に活かしたのか。③スポーツ復帰が約3週は早いのでは。と指摘をうけた。①皆川先生の「超音波でわかる運動器疾患」の文献より、新鮮出血は高エコー像に観察されると報告はあるが、なぜ高エコーなのかは不明であるため追及していく必要性を認識した。②症例は、腓腹筋自体には問題無く、起始腱膜と下腿筋膜との剥離型損傷であるため同部位の離開ストレスだけを注意し運動療法を行なった。③徐々に運動負荷を強め、疼痛の再燃やエコーでの変化も無かったため約3週で復帰を促した。今後は、症例数を増やし運動療法の有効性について検討していきたい。


                               (文責:いまむら整形外科 山本紘之)




症例3 40歳代 男性 中足骨骨折の一症例

 

 症例は40歳代男性で、右第3、4、5趾中足骨開放性骨折後の方である。某日、自動車をトラックに積載中に、傾斜を下がるように自動車が後方へ動き出し、車外に出ていた右足底中央に杭が2本刺さり、そのままの状態で遠位へ引きずられるように受傷した。同日、他院にて開放部と損傷組織の縫合が行われた。創部は2カ所確認され、足背への貫通はなかった。術中所見による損傷組織や縫合組織は不明であった。処置後はシャーレ固定され、受傷1ヶ月で部分荷重が開始された。受傷2ヶ月半後に全荷重が許可され、アーチサポートを使用していた。受傷3ヶ月経過し、リハビリ目的で当院を受診し、運動療法開始となった。

 初診時の理学療法所見は以下に示す。膝関節屈曲位での足関節可動域は背屈20°、底屈50°で左右差は認められなかった。またMTP関節の可動域は、母趾は伸展30°、屈曲30°、第2〜5趾は伸展20°、屈曲30°であった。リスフラン関節、各IP関節に制限は認められず、中足骨列を閉じるように圧迫することでモートン病の検査を行ったが陰性であった。表在感覚はモノフィラメントにて第2〜4趾および創部周辺に鈍麻があることを確認した。また、全荷重許可はされているものの荷重時痛があり1/3程度の荷重しか行えていなかった。歩行・ステップ・フットプリントにおいて踵骨接地後、損傷部付近(第3、4、5中足骨)に荷重する事が出来ず、前足部内側から母趾の範囲で重心移動している様子を確認した。疼痛は第2〜5趾MTP関節伸展で創部周辺に生じた。さらに足背より横アーチを徒手的につぶすことで荷重時同様疼痛が生じた。

 その後行った運動療法について以下に述べる。足趾の伸展時痛があることから、損傷後の不動による足趾屈筋群の短縮、癒着があると考え、疼痛の減弱、歩容の改善を目的に、主として足趾屈筋群の柔軟性改善、滑走性改善を実施した。加療後は、即時的にMTP関節の伸展可動域の改善、疼痛の減少が得られた。

 加療開始から4ヶ月(受傷後7ヶ月)経過後の所見を示す。以前よりも荷重をかけられるようになったが、未だ損傷部への荷重が不十分であった。MTP関節伸展可動域も改善があるもののリバウンドを繰り返し、安定していない。

 現在、本症例の可動域の安定化、荷重時痛の改善に難渋しており、needである歩容の改善まで至っていない状態である。歩容を改善するために、柔軟性の維持の方法や現在の疼痛の解釈、詳細にみていくべき評価について検討していただいた。

 フロアからの意見を記載する。今回の受傷機転や創部の状態より、骨以外で損傷が考えられる軟部組織としては、長趾屈筋、短趾屈筋、内外側骨間筋、足底の皮膚・皮下組織、内側足底神経が挙げられた。まず現在の疼痛が骨由来ということを否定するために、骨の叩打や牽引操作で疼痛がない事を

確認する必要性があった。次に、可動域制限の因子となっている軟部組織を同定するための評価法を記載する。まず、足関節の底背屈を変化させ収縮・伸張することで、テノデーシスアクションを利用した長趾屈筋、短趾屈筋の鑑別を行う事が出来る。足関節背屈位でMTP関節伸展可動域の減弱や疼痛が出現し、底屈位で改善される場合は、長趾屈筋由来である可能性があり、どちらでも症状が出現する場合は短趾屈筋の可能性がある。また、足関節底屈位にてMTP関節の内外転位を変化させた肢位でMTP関節伸展を行う事で、内外側骨間筋の鑑別を図る方法が提案された。外転位での伸展では、内側骨間筋がより伸張され、内転位では外側骨間筋が伸張される。さらに各組織の短縮だけではなく滑走性の状態をみるために、エコーを用いながら鑑別することも提案された。これらの筋の鑑別を行い、筋の圧痛がある場合は収縮誘導によるリラクセーション、短縮がある場合にはストレッチ、そして、滑走障害がある場合には、収縮と伸張による組織間の滑走性を出していくことが必要とされた。また、治療効果を高めるためのADL上の工夫をご教授いただいた。1つ目はガーゼを帯状に変化させ使用し、各足趾間に詰め足趾間を広げることである。2つ目は同じくガーゼ等を丸く固め、足底の瘢痕部位を圧迫する様に装着することである。3つ目はキネシオロジーテーピングの一端を5本に裂き、踵部足底側から各足趾にかけて貼付することである。これらにより、日ごろから効果的に足趾の運動を行う事が出来るようになる。

 そして、内側足底神経の損傷の鑑別を行うための評価法について説明があった。その方法としては、モノフィラメントを利用して、内側足底神経の走行上を横断する本症例の創部を境とした感覚の変化があるのかを確認する方法であった。創部を挟み遠位にて感覚鈍麻がある場合には同神経の損傷の可能性がある。このとき感覚鈍麻の状態からしびれの訴えに変化してきている場合には、神経の回復途上の可能性があり、回復の阻害と侵害刺激による感覚過敏を防ぐ目的で、神経の伸張ストレスを加えないようにすることが挙げられた。そのために、日常生活にて神経への刺激を減らすため、アーチ低下を防ぐテーピングや足底板が必要性であるとされた。

 皮膚・皮下での瘢痕、滑走障害の有無を確認するには、創部の付近の伸張位の変化で疼痛の変化をみる事が提案された。同部での障害がある場合には、徒手的に皮膚・皮下組織を滑走される必要がある。

 アーチサポートを外した状態でのステップ動作にて、足部は凹足で前足部への荷重時痛を回避するために長母趾屈筋や長趾屈筋などの足外在筋を強く収縮させていると指摘された。この収縮により、同筋の過剰収縮を招き、筋緊張を高める事が推察される。この、アーチ変化による疼痛を回避するために、アーチを支える足底板を作製する事が必要になる。さらに、ヒールアップし足関節底屈位にて荷重することで、足外在筋の収縮に変化があるのか確認する事を提案された。

 検討から考えられる、本症例の現在の状態についての解釈をまとめる。本症例はアーチ低下により侵害刺激を誘発しており、刺激を回避するための歩容をしていることが考えられた。そのため、足趾屈曲の過剰収縮による足趾屈筋の緊張増加を招き、筋スパズムを発生させ、伸張性のリバウンドが生じていると考えられた。ゆえに、前足部の疼痛発生組織を断定するとともに、アーチ低下による侵害刺激を減少させる事で、疼痛の減弱を図る事が先決であると考えられた。この疼痛の減弱をすることで、足趾屈筋の過剰収縮を抑制し、歩行中に足趾伸展が出るようになり、筋柔軟性のリバウンドを減少させられると考えられた。

 以上の検討を参考に、今後の評価・治療経過を追っていきたい。

 今回の検討から、損傷組織の情報がない場合でも、各組織に詳細な評価を行い、病態を把握し、セラピストに出来る的確な治療を選択する事が、症状改善のために必要であると再確認できた。

                       (吉田整形外科病院 文責:丹羽雄大)





症例4 70歳代 男性 両踵骨骨折を呈した一症例

 今回、両踵骨骨折を呈した症例の運動療法を経験した。整形外科医、作業療法士、義肢装具士の連携により、解剖学的整復、運動療法、装具療法を組み合わせた結果、早期の歩行、ADL獲得に至ったので、その過程について報告した。また、装具作成に対しての助言も頂いたので報告する。 

 症例は70歳代の男性である。某日、階段から転落して受傷。当院に来院し両踵骨骨折骨折と診断された。右はjoint-depression type(陥没型骨折)の粉砕型、左はtongue type(舌状型骨折)の粉砕型であり、3日後に大本法(徒手整復)、Westhues法が施行された。レントゲン上では、ベーラー角は減少していた。術後3日目より作業療法を開始した。初回評価時は著明な腫脹、熱感を認めたため、エラスコット包帯による圧迫とアイシング、挙上を24時間管理で実施した。踵部後方よりsteinmann pinが突出しているので、ストッキネットをpinが隠れる程度のドーナツ状に作成し、踵をベッド上につけるよう配慮した。運動療法としては踵部皮下の滑走練習Kager’s fat padの柔軟性維持、足趾の自他動運動足関節の自動運動、患部外筋力強化を実施した。フロアからは、この時点からheel padの柔軟性維持も必要だとの意見を頂いた。

 術後3週で装具の採型が行われた。この時点で両側とも足関節背屈10°、底屈40°、内外反5°程度であった。疼痛はなし、股関節、膝関節の可動域、筋力に問題なし。転位はなく、6週で抜釘の予定であった。装具を作成する目的として早期の歩行・ADLの獲得を挙げた。両側骨折であることと、1012週までは完全免荷の予定であったこと、症例の時間的・経済的負担を考慮してPTBGraffin、アインラーゲンを組み合わせた短下肢装具を作成した。

 術後4週で装具完成し、立位訓練を開始した。疼痛なく、歩行器歩行を獲得した。術後6週で抜釘し、両側T字杖歩行を獲得した。術後8週でPTBを除去し、Graffinに切り替えた。独歩可能となり、術前ADL獲得し、術後9週で退院となった。術後10週でGraffinを除去し、アインラーゲンに切り替えて部分荷重を開始した。フロアからはこの時点の歩行動画から、立脚期に外側に流れる傾向があるため、まず採型の時点でアインラーゲンを作成する必要性があまりなかったのではないかとの意見を頂いた。

 術後12週の来院時の評価として、両側とも背屈20°、底屈50°、内外反5°程度であり、底屈筋力は2+程度であった。疼痛は、30分歩行した際に踵骨外側に出現するが、靴を脱げば消失するとのことであった。踵骨骨折術後の追跡臨床評価(Creighton-Nebraska Assessment)では右88点、左83点でgoodであり、良好な成績を得た。

 踵骨骨折後の後遺症として、歩行時の踵骨外側の遺残性疼痛の報告が散見される。その要因として、後距踵関節面の整復不良、距骨下関節の拘縮、骨下関節嚢・骨間距踵靭帯および周囲軟部組織の炎症による足根洞症候群距、踵骨外側壁膨隆(横径増大)に伴う狭窄性腓骨筋腱腱鞘炎腓腹神経絞扼、長期ギプス固定による非荷重期間の遷延や骨萎縮などが挙げられる。遺残性疼痛は術後23年で消失されるとされているが、本症例の場合、早期の解剖学的整復、運動療法、装具療法を実施したが、後距踵関節面の整復不良、距骨下関節の拘縮、下腿三頭筋の筋力低下は残存しており、これが歩行時の疼痛の要因となっていることが考えられた。

 早期歩行・ADL獲得という目的は達成したが、足りない治療や先を見据えた装具の作成、今後の長期経過を追う必要性を感じた。

                    (文責:桑名西医療センター 小牧亮介)