225回整形外科リハビリテーション研究会報告

2014.03.08 於:名古屋会議室 名駅西口店


症例1 60歳代 女性  高位脛骨骨切り術を施行した一症例 
           〜術後
4週以降より出現した右膝内側部痛について〜

 

今回、変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術(以下HTO)を施行した一症例の理学療法を担当した。術後4週経過した時点で、右膝関節内側部に限局した疼痛が出現し可動域改善が停滞した。術前より現在までの経過を踏まえ、今後の運動療法の方針についてご助言いただいたので報告する。

 

症例は60歳代の女性である。術前理学所見は、右膝関節荷重時に内側裂隙に疼痛を認め、ROMは右膝屈曲135°、伸展-10°であり、可動域制限を認めた。立位X-Pにて内側関節裂隙の狭小化を認め、同部位に圧痛を認めた。現在までの経過であるが、当院入院後に右膝関節鏡視下手術(以下ASS)にて滑膜シェービング、半月板切除を行なった後、その1週間後に右HTO施行となった。術後は弾性包帯下にてknee brace固定となり、術後2weekにて抜糸を行い、術創部が直接触知できる状態となった。術後は浮腫管理、患肢挙上の徹底、calf pumpingQ-SettingVastus relaxationicing、患部外トレーニングを中心に行い、弾性包帯の上より可能な限り術創部周囲の皮膚、皮下組織の滑走訓練を行い、術創部が直接触知可能となった術後2週より創部周囲の皮膚、皮下組織に対して離開ストレスに考慮しながら柔軟性改善操作を実施した。また、同時期よりactive ROM開始となり、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋を中心に選択的筋収縮訓練を促していった。現在術後4週経過した時点にて右膝屈曲4050°の範囲にて内側部痛が出現し、80°以降の角度であれば疼痛軽減し現在屈曲105°〜110°と可動域改善が停滞していた。伸展可動域は-50°の範囲でExtension lag5°残存しており、今後の予定としては術後5weekよりPWBを開始し術後10weekまでにFWBとなる予定である。

検討項目として、一つ目は、現在術後4週経過時点での右膝関節内側部痛の解釈について、術後のalignmentの影響はあるのか、また、疼痛の状態として手術による疼痛の可能性、修復過程から考えて軟部組織による疼痛であるのか、もう一点はHTO術後の運動療法の経過についてROMの推移や荷重時期や今後の方針などについて検討がなされた。フロアーからの意見としては、HTO前のASSにてinfra-patellar-tissueの損傷、IFPの癒着の問題、また膝関節内側支持機構の損傷や大腿外側組織のtightnessによりpatellaの外側偏位があり内側部でのストレスが加わっていたのではないかという意見がだされた。また、術前のX-P所見において内反膝のalignmentを呈しており、伸展制限が存在していることから術前よりMCLの滑走不全があったのではないかといった意見もあった。HTO術後の屈曲可動域の推移については症例にもよるが術後3weekにて120°を一つの目標に獲得していくとの意見もだされた。現時点で術後4week経過し、今後荷重期に入っていき歩行を見据えてExtension lagの改善とともに、伸展可動域を維持しておくことも重要ではないかとの指摘もあった。また、屈曲可動域については立ち上がり動作などADL範囲内にて必要とされている120°を目安にしていきたいところである。屈曲・伸展可動域にしても、術後4週にてsuprainfraの柔軟性維持は継続していく必要性はあると考える。また、他関節であるhipankleのアプローチも行うことが安定した膝関節機能を構築していく為にも必要であると考えさせられた。画像所見や術式などを考慮し、機能解剖学をもとに病態を十分に理解した状態でアプローチを行う重要性を再確認できる症例検討であった。

                (文責:北斗病院 小畑知博)



症例2 小学生 女児
     離断性骨軟骨炎後に肘伸展位荷重時痛が残存した器械体操選手

 

症例は器械体操をしている小学1年生の女児である。2歳児から体操をはじめ小学1年生の春から選手コースとなった。小学1年生の夏ころから右肘関節に違和感を自覚しはじめ、徐々に倒立や肘関節屈伸動作で右肘関節橈側部に疼痛が出現した。秋ころ他院を受診し離断整骨軟骨炎と診断された。翌年1月に当院を受診し運動療法が開始となった。MRIでは腕橈関節に若干の水腫を認めていた。

右肘関節屈曲130°(左:150°)、伸展‐5°(左:5°)、回内外はともに90°で左右差は認めなかった。屈伸最終域で腕橈関節後方部に疼痛が出現し、圧痛は橈骨頭の後方部に認めた。内外反ストレステストは疼痛なく不安定性も認めなかった。初期の運動療法としては、肘筋の収縮訓練と腕橈関節の牽引操作を実施し、屈曲145°、伸展0°となり可動域最終域での疼痛は消失した。腕立て伏せの姿勢を肘完全伸展位で行うと、腕橈関節周辺に疼痛が残存していた。肘伸展位での回内制限を認めたため、長短橈側手根伸筋、LCL複合体のストレッチングを施行した。加療4週間後には、屈曲150°、伸展5°となり、倒立時の腕橈関節周辺の疼痛は消失し通常練習に復帰した。

肘伸展位荷重時痛が残存している時期は、回内可動域に一見問題がないように思えたが、肘関節を伸展させていくと回内可動域が減少していく所見を認めた。MRIでは、腕橈関節に水腫の貯留が描写されており、関節炎後の拘縮が残存している可能性があった。特に、肘関節屈曲と前腕回外の作用を有する長短橈側手根伸筋とLCL複合体の伸張性、柔軟性の欠如が肘伸展位での回内可動域の制限に関与していたと思われた。肘関節への外反ストレスにより発症する、MCL損傷や離断性骨軟骨炎では、腕橈関節周囲組織の拘縮が発生する可能性は高い。器械体操は、上肢で体重を支持する機会は多く、肘関節完全伸展位での荷重動作の獲得は重要であると考える。器械体操における肘関節障害の場合、肘関節前外側組織の評価および治療は着目すべきものと思われた。

 

              (文責:平針かとう整形外科 岡西尚人)





症例3 60歳代女性 股関節殿筋内脱臼と同側の膝関節痛を訴える症例の検討

 

 本症例はTHA施行右股関節殿筋内脱臼、左股関節は重度の変形、右膝関節は外反変形を呈していた。右膝関節痛が強いためTKAを希望されたが、先に股関節の状態を改善させる目的で、脚長差として短く感じていた左股関節に対してTHAを施行された。施行後は左股関節の可動域拡大と筋力強化を主体に運動療法を行っていたが、徐々に右膝関節痛が悪化した。2ヶ月間の入院後、シルバーカーで退院となったが、右膝関節痛のためADLが困難となり、再入院となった。本症例について、膝関節の疼痛の原因及びその評価方法と、右股関節の状態を考慮したうえで膝関節にどのようにアプローチを行ってよいかを検討していただいた。

 理学所見として、股関節可動域は右屈曲70°、伸展10°、外転10°、内転0°、外旋35°、内旋55°左屈曲70°、伸展5°、外転15°、内転15°、外旋30°、内旋25°で、股関節筋力は両側とも全方向においてMMT2レベルであった。膝関節可動域は、右屈曲120°、伸展−20°、左屈曲150°、伸展-10°であった。膝関節動揺性は外反方向以外は認めなかった。疼痛部位は外側関節裂隙を中心とした膝関節前面で、LMに圧痛を認めた。疼痛は右膝関節のみに訴えており、屈伸時と歩行時の遊脚相初期に著明であった。荷重時痛は認めなかった。

 フロアからは、左THA施行後は左股関節の支持性の低下による右膝への負荷の増大、歩行の遊脚相初期の下腿外旋〜下腿内旋による膝関節への回旋ストレス、左下肢の脚延長となり、相対的に右膝関節が伸展位となった結果、前方への圧縮ストレスが増加したのではないか、などの意見が挙がった。

 総括として、レントゲンでは通常のTHAよりもカップが上方に位置しており、筋の短縮があるためか右股関節の位置を考慮して行ったのか等、医師と積極的に相談を進めながら運動療法を検討していく必要があること、術前よりも可動性が増した反面、内的安定性が求められるようになった左股関節の支持性を高める必要があること、歩容を詳細に評価し、機能に合わせた歩行レベルの設定や、骨盤のアライメント是正のための補高を行うなどの意見を頂いた。

 本症例の理学療法を担当する上で、今後の手術(THA、左右TKA)による身体特性の変化、並びに脱臼や再置換術を予防するために、様々な要素を考慮したうえで運動療法を計画する必要があると考えられた。

               (文責:吉田整形外科病院 野村奈史)