230回整形外科リハビリテーション研究会報告

2015.1.17 於:国際医学技術専門学校

症例1

13歳 男性 左殿部から膝窩部痛を呈するバスケットボール部の一症例

 

 約2カ月前から原因無く左殿部痛と左膝窩部痛が出現した。部活動を続けていたが疼痛が増強してきたため、某整形外科クリニックを受診した。股関節、膝関節の単純X線画像では、特異的な所見がなかった。

 主訴は座位時の疼痛(10分経つと出現)と歩行時痛(NRS4)、走行時痛(NRS7)である。疼痛部位は、左殿部と左膝窩部にあり、疼痛が増強してくると大腿後面まで出現してくるとのことであった。 座位アライメントは骨盤後傾、腰椎後彎位を呈しており、骨盤前傾、腰椎前彎させると左膝窩部に疼痛が出現したが、左膝関節を軽度屈曲させると軽減し、軽度伸展させると増強した。歩行時痛と走行時痛は、遊脚後期に疼痛が出現した。運動時痛は、体幹の前屈で指尖が膝蓋骨レベルで出現し、体幹伸展、側屈、回旋、kemp testでは疼痛は無かった。左殿部痛は、SLR30°、股関節内旋(屈伸0°)40°で認め、SLR時の疼痛は足関節背屈または股関節を内旋させると増強した。左膝窩部痛は、股関節屈曲120°、PLF test時に認めた。圧痛は、左の多裂筋、L3/4L4/5L5/Sの椎間関節、PSIS、後仙腸靭帯の上部、梨状筋、上下双子筋、内閉鎖筋に認めた。ハムストリングスが損傷している所見や腱反射、感覚には異常は無かった。運動療法として、多裂筋のリラクゼーション、股関節深層外旋筋のリラクゼーション、坐骨神経の滑走訓練を施行した。運動療法後は、わずかに疼痛が軽減する程度であった。

 検討項目として、疼痛の原因は何由来かという点と治療方針について検討していただいた。

 フロアーからは、梨状筋症候群であればSolheim testPace testを行うこと、後大腿皮神経障害であれば下殿神経と同様に走行しているため大殿筋の萎縮や筋力を評価すること、仙腸関節障害であれば下位腰椎の動きが関与してくるため腰椎の機能撮影が必要であること、上殿皮神経障害の評価を行なうことを指摘された。またガングリオンによる坐骨神経の絞扼障害の可能性もあるためMRIの撮影を指摘された。

 殿部から膝窩部の疼痛の原因には、筋肉もしくは神経由来が考えられるが、その中でも詳細に評価し鑑別していかなければならない。今回は、考えられる疾患に対しての詳細な評価が不十分であった。

 
                (文責:山本紘之)


症例 2  尺骨神経症状を呈する水泳選手の一症例

  

 症例は水泳部に所属する20代の女性である。専門は自由形中距離(100M 200M)であり、練習時間は一日に8時間程度行っている。

昨年10月中旬にウェイトトレーニング後から左肘関節に力が入らなく、さらに左環指の痺れを自覚した。その後、1週間様子を見たが症状が改善しないため当院を受診し「胸郭出口症候群」と診断された。その後も依然と症状が改善しないため、大学内の病院を受診し、医師と理学療法士からは「胸郭出口症候群」は否定された。今年1月、再度当院を受診し「肘部管症候群」との診断名のもと運動療法開始となった。

再診時の当院医師の診断では、超音波検査より尺骨神経周囲の明らかな圧迫病変がないこと、さらに前腕近位尺側に圧痛があり、尺側手根屈筋の収縮により疼痛が増悪することより、回内屈筋群でのダイナミックな絞扼に伴う尺骨神経障害とされた。

 

初診時の所見を以下に示す。

痺れは左内側上顆から環指小指にあり、感覚鈍麻も認めた。利き手は右であり、健側の右が43kg、左24,5kgWright test陰性、Morley test陰性、Eden test陰性、Struthers`arcadeでの絞扼はなかった。痺れが悪化する条件は、ビート板を長時間もってキックの練習、腕立て伏せ、尺側手根屈筋・深指屈の収縮であった。神経伝達速度は肘部管・Gyon管でともに正常範囲内であった。

 

検討項目は、①病態の解釈 ②病態を把握するために今後行うべき評価 ③ 行うべき運動療法、の3つとし、運動療法開始から日が浅く1回しか行えていないことも踏まえて様々な意見をいただいた。

フロアからの意見で多かったのは、頸部と胸郭出口症候群の評価を詳しく行うべきとの意見であった。評議員の先生方からも、胸郭出口症候群は否定されたがどのレベルで検査をしたのか、また頸部・胸部・肩関節・肘関節・手関節とどのレベルで問題が生じているのかを評価すること。さらに、影響していそうな筋を11つ明確していくことが必要との意見をいただいた。

今後の運動療法では詳細な評価を進めていくが、直接的な症状に改善には至らない。そのため、テーピングなどの対処療法も考えるべきであるが、根治治療ではないため症状の増悪を伴うリスクがあることも理解し、患者と相談のうえ方針を検討していくことが必要である。

との意見もいただいた。

 

 今回のご指摘・ご指導を参考に1つ1つの評価を丁寧に行い、原因究明・治療と進めていきたい


(文責:大萱生有耶)


症例3 

60歳代 女性 脛骨腓骨遠位端骨折を呈した一症例

 

 症例は60歳代の女性である。H26年某日、脚立から転落し右足底から地面に落下し受傷した。脛骨腓骨遠位端骨折の診断名のもと、4日後に他院にてOP施行、4週間のギプス固定の後、当院を受診し運動療法を開始した。術後8週にて10kg荷重許可、その後1週ごとに10kgの漸増となった。

 レントゲン所見では、脛骨の天蓋が転位しており、転位の程度、腓骨の骨折の高さから、Pilon骨折のルーディーの分類Type2と評価した。OPは、脛骨側はCCSにて、腓骨側はキルシュナー鋼線にて固定されていた。CCSが後方に過剰に突出しているように見てとれた。

 圧痛は右足関節後方内側部・後脛骨動脈の後方に認められた。再現痛としては、足関節を背屈方向に操作し、疼痛が得られたところで母趾を他動伸展することで疼痛増悪し、母趾を他動で屈曲することで疼痛は消失した。2〜5趾を他動で屈曲することで疼痛に変化はなかったが、母趾を自動で屈曲することで疼痛は増悪した。関節可動域は、膝屈曲位での足関節背屈は自動-10°他動-7°、母趾屈曲位での背屈は-5°、母趾伸展位での背屈は-15°、第25趾伸展位での背屈は-10°であり、いずれも最終域にて足関節後内側部痛を訴えた。エコーでは足関節後方からピンを撮影し、母趾の他動屈伸を行った。滑走に伴いピンの先端をFHLが蛇行し、ピンの先端には低エコー像が確認できた。同部位のピンの頭側よりにドップラー反応が確認された。治療はFHLのダイレクトストレッチやピン周囲でのFHLの持ち上げ操作を行っていた。歩行時には補高をすることで疼痛を回避した。

6週後、圧痛は初診時と同部位に認められた。再現痛出現における関節操作には、初診時と比べ変化はなかった。関節可動域としては、足関節背屈は自動5°他動13°、母趾屈曲位での背屈は15°、母趾伸展位での背屈は5°、第25趾伸展位での足関節背屈は10°であり、改善を認めるものの、いずれも最終域での後内側部痛は残存した。エコー所見として、同部位に炎症反応は認めなかった。しかしFHLを滑走させることで、若干の接触はあるように見てとれた。

 検討項目としては、疼痛の原因がピンによるものと断定するための客観的な評価およびエコー画像の撮り方、また治療方針として今後の展開はどうすべきか、というものであった。

 フロアからは、疼痛の原因となる組織がFHLなのかを特定するために、FHLを遠位・近位滑走させた際のドップラー反応も同調するかをみたり、FHLを持ち上げた際および押しつぶした際のエコーを撮影したりする方法が提案された。補高により相対的に底屈位にし、FHLを滑走させないことで疼痛は消失するが、FHLや足関節の拘縮を助長することが危惧され、踵骨の回内外や足部縦アーチの補正にて補高の高さを低くするとの意見があがった。

 本症例において、術後4週のギプス固定期間および突出したピンの影響により、FHLはピンの高さで裂けており、ピンの先端から表層のFHLには可動性はあるが、深層は可動性を失っていた。アプローチとしては、ピンの近位において外側は腓骨筋とヒラメ筋間から、内側は脛骨内側縁と後脛骨筋間より指腹を深く挿入し、深部のFHLのダイレクトストレッチの方法が教示された。

 主に疼痛を発するのは、筋腹ではなく筋膜であり、それが裂けることで、疼痛は次第に落ち着いていくという。ゆえに歩行を開始することで、疼痛が無くなっていくという現象が起こるとのことであった。

 治療の第一選択としては、主治医に依頼して抜釘をして頂くことが挙げられるが、患者への負担が大きい。疼痛を発している組織を理学所見や画像所見のなかで可能な限り推測し、今回教授頂いたアプローチを行っていく必要があると考えられた。

(文責:森戸剛史)