231回整形外科リハビリテーション研究会報告

2015.2.21 於:アイ.エム.ワイ貸し会議室

症例1 股関節症例

症例は28歳の女性である。主訴は、右大転子後面から殿部にかけてと上前腸骨棘辺りに常に力が入ってしまうこと、また同部をポンポンと叩きたくなることである。また、子供を抱いた状態で荷物を持ち長い距離を歩くと同部に疼痛が出現することも訴えた。この症状は、10年前に部活動でバドミントンを行った際に、左半月板の切除術(内側か外側かは不明)を行い、部活動に復帰した数か月後から発症している。

 疼痛再現方法は、背臥位にて股関節外転、内転、外旋操作で、疼痛回避方法は、股関節屈曲位から他動外転することである。

 股関節の可動域は骨盤固定下では屈曲90°伸展15°外転30°内転10°外旋45°内旋50°で左右差は認めなかった。外転、内転、外旋では最終域で疼痛を認めた。筋力は、MMT45レベルを認めるが、側臥位での外転運動時には疼痛を認めた。

 Anterior impingement signは両側とも鼡径部に疼痛を認め、FABER testは両側とも15cmだが右側のみ大腿外側部に疼痛を認めた。Log roll signは陽性で嫌な感じを訴えた。

 仙腸関節負荷試験は陰性で、仙腸関節へのブロック注射では殿部痛は消失したものの大腿部痛は消失しなかった。

 レントゲン画像上、股関節正面像よりCE角は患側26°健側28°で、腰椎側面像より腰仙角は45°であった。放射状MRIより円靭帯の部分断裂もしくは欠損のような像が認められた。

 運動療法として、中・小殿筋、大腿筋膜張筋のストレッチング、大腿骨頭の求心性を高める操作(軸圧方向への圧迫と牽引)、大腿直筋反回枝のストレッチング、仙腸関節の安定性を高める操作を行ったが、どれも一過性の効果しか得られなかった。現在は、股関節の安定性を高めることを目的として、股関節屈曲位からの外転運動により小殿筋の収縮を高めることを主に行っている。この治療法では、VAS10から5に軽減している。

 フロアには病態はどのようなものが考えられるのか、その病態に見合った治療方法はどのようなものかを検討して頂いた。

 フロアからは、股関節周辺に出現している症状が股関節由来か脊椎由来かの鑑別を再度行うよう意見が上がった。股関節への治療で一定の効果は得られているため股関節の不安定性等の疾患は考えられるが、脊椎由来の疾患として、L5/S1での外側狭窄症、腸腰靭帯由来の症状、上・中殿皮神経の絞扼症状の鑑別が必要である。

 症例提示を終えて、本症例において提示者は脊椎疾患の否定をすべてせずに股関節へのアプローチに固執していたように感じた。幾つかの状態が組み合わさって出現している症状の可能性が高い症例ではあるが、鑑別除外診断の徹底と、その病態と断言できる所見、画像の収集を行う必要性がある。

(文責:岡西尚人)



症例2

13歳 男性 左殿部から膝窩部痛を呈するバスケットボール部の一症例

 

 230回の報告書に記載してある症例の経過報告と再検討である。

 前回の検討結果を踏まえて、考えられる病態に対する再評価を行なった。梨状筋症候群を疑う検査として、Solheim testは陽性、Pace testは陰性、圧痛所見は認められなかった。後大腿皮神経障害を疑う検査として、大殿筋の筋力低下と軽度の萎縮が認められた。仙腸関節障害を疑う検査として、各種ストレステストは陰性、圧痛所見は認められなかった。上殿皮神経障害を疑う検査として、疼痛出現動作での上肢の肢位を変化させた際の疼痛に変化はなく、圧痛所見も認められなかった。腰椎単純X線画像にてL5/S椎間の狭小化が認められ、MRIよりL5/S椎間において、やや左寄りの後方正中に椎間板の突出が認められた。SLR30°で疼痛が出現した際、頭頸部屈曲もしくは足関節背屈で疼痛が増強し、頭頸部伸展もしくは足関節底屈で軽減した。座位もしくは正座で腰椎を後彎しても疼痛は出現しなかった。圧痛は、多裂筋、L4/5およびL5/S椎間関節、腰方形筋、腸腰靭帯に認められた。運動療法として、多裂筋および腰方形筋のリラクゼーション、腰椎椎間関節の可動域訓練、腸腰靭帯の伸張操作を施行した直後は、体幹前屈角度はやや拡大し疼痛は軽減したが、再来院時には元に戻っている状態であった。

 検討項目は、①疼痛の原因、②治療方針であった。

 フロアーからは、坐骨結節部での仙結節靭帯と大腿二頭筋長頭の付着部症の可能性があるとの意見が挙げられた。座位時の疼痛は仙結節靭帯由来であることが多く、丁寧に圧痛所見を診ていく必要性を指摘していただいた。この部位が原因であれば、大腿二頭筋長頭および半腱様筋の伸張性改善が必要であり、ジャックナイフストレッチが推奨された。またヘルニア由来を鑑別するためにも、感覚検査はSEMSを用いるなど正確に評価する必要があるとの指摘があった。

 殿部痛や膝窩部痛の原因は多岐にわたるため、考えられる病態を丁寧に評価し疼痛の原因を探求していくことが重要であると再確認できた症例であった。

 (文責:猪田茂生)