233回整形外科リハビリテーション研究会報告

2015.5.16 於:国際医学技術専門学校

症例1

肘関節離断性骨軟骨炎術後の一症例

 

症例は、高校一年生の野球部に所属する男児で、ポジションはサードである。中学生の頃から投球時の肘痛とROM制限を自覚していた。今年1月に他院を受診し、離断性骨軟骨炎の遊離期と診断され、3月下旬に遊離体摘出術と軟骨骨柱移植術を施行された。2週間のシーネ固定の後に自動運動を許可され、術後6週と3日から当院での運動療法が開始となった。画像所見では橈骨頭の肥大を認めていた。術者からは、術中に橈骨頭の偏心性を認めROM制限が残存する可能性があり、無理のない愛護的なROM訓練を指示されていた。肘関節屈曲115°、伸展-15°、前腕回内70°、回外20°であり、肩関節や手関節には制限を認めなかった。エコー観察では、腕橈関節後方関節包や前方関節包が健側より肥厚していた。また、回内時には、健側と比較し橈骨頭が著明に腹側へ移動していた。運動療法としては、橈骨頭の腹側への移動を抑制しながらの回内運動、肘筋の反復収縮、前方および後方関節包のストレッチングを行った。2度の治療後には、屈曲125°、伸展-5°、回内80°、回外20°であった。回外可動域は、肩関節、肘関節、手関節の肢位を変えても変化はなかった。

回外制限の原因と回内時の橈骨頭の著明な腹側移動の原因について検討が行われた。フロアーからは、数年来のROM制限があったため、回外制限は近位橈尺関節のみならず、遠位橈尺関節も関与している可能性が指摘された。そもそも、肘離断性骨軟骨炎は外反力が何度も加わり続けた結果として発症しており、腕橈関節の前外側部の関節包やLCL前方組織の伸張性低下が残存している可能性は高く、同部の伸張性を獲得する必要性を指摘された。回内時の橈骨頭の動態については、後方組織の伸張性低下、もしくは前方組織の過緊張が関与している可能性を指摘されたが、明確な回答は得られなかった。

検討結果を踏まえ、軟骨柱移植術後を念頭に置いた運動療法では、軟骨の再生を促す必要があり、無理な可動域訓練は軟骨柱移植部に過剰な軸圧を招く可能性がある。そのため、今回提示して頂いた意見を元に腕橈関節周囲の軟部組織の伸張性を詳細に評価しつつ治療を行い可動域の改善を図る必要があると思われた。

 

(文責:石黒翔太郎)


症例2 40歳代 男性(聴覚障害がありコミュニケーションが困難) 

右膝内側部痛を訴える一症例

 

 症例は201518日に仕事中に転倒しかけ、右膝関節をknee-in方向に捻り受傷した。同年23日に当院を受診し、変形性膝関節症の診断を受けリハビリ開始となった。主訴は階段降段時痛、しゃがみ込み時痛であった。当初は両側支柱付装具を使用していたが、医師から筋力低下の原因になるとの説明を受け現在は外している。疼痛部位は膝関節内側に幅広く認めた。単純X線写真では特徴的な所見は認めなかったが、MRIにて大腿骨側のMCL付着部に高輝度変化があり、疼痛部位とも一致していた。熱感・腫脹は認められず、膝関節ROM-5−110であり屈曲最終域では階段降段時、しゃがみ込み時と同部位にVAS90mmの激痛を訴えた。圧痛はMCLと内側半月板に確認できた。整形外科テストでは内外反ストレステスト、McMurrayテスト、Apleyテストを行った。内外反ストレステストでは不安定性はなかったが、外反ストレスにおいて膝関節内側部痛を訴え、McMurrayテストでは外反伸展にて膝関節内側部痛を訴えた。疼痛はどちらも疼痛部位と同様であった。Apleyテストは陰性であった。初期評価と画像所見から、MCLの付着部での炎症と考え安静と膝関節可動域維持を目的に大腿四頭筋の徒手的リラクセーションと膝蓋骨の滑動性運動を行った。その結果、運動療法開始2wの時点で膝関節ROM0140と改善し、VAS10~20mmへと軽減した。圧痛は初期評価と同様にMCLと内側半月板に認め、膝関節屈曲時痛は消失したが、膝関節屈曲位から伸展させと疼痛が発生した。一連の症状は改善していたが、運動療法開始3wにて腓腹筋の伸張により疼痛の再現を認めた。足関節の背屈可動域は患側で膝関節伸展位15°(20°)、屈曲位25°(25°)であり、腓腹筋の膝関節屈曲位での背屈では患側でも疼痛短縮が疑われた。このため、腓腹筋のストレッチを追加し、加療を進めると膝関節伸展位背屈可動域は20°へと改善し、再現痛は消失した。その後約1ヶ月通院ができず、現在は膝関節ROM0130停滞し、疼痛もVAS70mmへと増悪した。疼痛発生動作と部位は変化していなかった。検討課題は現在の疼痛の原因がMCLの付着部炎かを明確にすること、腓腹筋のストレッチによりMCLの疼痛が改善したメカニズム、今後の運動療法の展開についてであった。フロアからは時期的に考えても現在の疼痛の原因はMCLの付着部炎と考えるのは難しいとの意見があった。やはり拘縮性の疼痛であることが考えられるが、鵞足筋との鑑別は丁寧に行うべきであり、今回は評価が不足していた。また、評価時では歩行時痛はないとのことだったが、歩行動画を見る限り下腿は内側ホイップを呈し、患側の踵接地から立脚中期にかけ股関節は内旋していた。このことから歩行時においても患側膝関節には常にknee-inのストレスが加わっていたと予想できる。段差降段時においても、今回は疼痛が強く評価できていなかったがおそらく歩行時と同様に患側膝関節はknee-inしているだろうとの意見もでた。その場合、まずは膝関節の動きを徒手的に矯正し、どういった状態で降段をすれば疼痛が軽減するのかを評価する必要があった。また、疼痛に対する反応が敏感であることから、神経過敏状態になっているのではないかとの意見もあった。膝関節内側の知覚神経は伏在神経や脛骨神経からの枝が複雑に支配しているため、これらの神経への伸張刺激や圧刺激での疼痛の変化を評価しても良いのではとの指摘もあった。腓腹筋ストレッチによる症状改善のメカニズムとしては、解剖学的に連結はないため、腓腹筋の柔軟性獲得が何らかの形で膝関節のアライメントを改善させたのではないかとの意見があった。さらに、神経の絞扼、圧迫が軽減した可能性もあったのではないかとの意見もあり、間接的に症状の改善につながった者であると考えられた。最後に今後の運動療法の展開に関しては、通院の中断により症状の増悪がみられたことや、歩行でも膝にストレスが加わっていることから装具の最装着や、テーピングによるアライメントの是正等を行っていくべきとの指摘を受けた。また、現在の疼痛の原因を明確にし、その上でその組織に対する運動療法を展開するべきとの意見があった。疼痛の原因としては様々な原因が挙げられたと同時に、それらの可能性に対する評価が不足していることを理解できた。コミュニケーションが困難な場合でも一つ一つ丁寧に評価していく必要があることを再認識できた症例であった。