234回整形外科リハビリテーション研究会報告

2015.6.20 於:国際医学技術専門学校

症例1  0歳代 女性 左臀部から下腿後面痛の増悪軽減を繰り返す症例

 症例は左臀部から下腿後面痛の増悪と軽減を繰り返す70歳代の女性である。レントゲン画像上、L4/5L5/Sの狭小化、すべり症及び、陳旧性のL3圧迫骨折を認め、MRI画像からはL4/5/Sの椎間板ヘルニアと終板障害、L3/4/5レベルでの多裂筋の脂肪変性が確認された。疼痛出現一度目では、朝起床時に臀部から下腿後面に激痛が生じた。圧痛は梨状筋、坐骨神経、L4/5L5/Sに認め左ケンプtestで左下位腰部に疼痛が出現した。疼痛出現二度目では、座位姿勢を長時間とっていた翌日の朝から疼痛が生じた。圧痛は梨状筋、坐骨神経、後仙腸靭帯に認めたが、腸骨を後方回旋位にすると圧痛は軽減した。Friberk testPatrick testは陽性で骨盤固定下では疼痛は消失した。疼痛出現三度目では、長時間歩いていた際に左下位腰部から左下腿外側にかけて疼痛が生じた。圧痛は梨状筋、坐骨神経、L4/5椎間関節に認め左ケンプtestで左下位腰部から下腿外側にかけて疼痛が出現したがL5を止めると疼痛は減少した。また、足関節背屈筋力、足指伸筋筋力、腱反射、知覚は正常であった。疼痛出現三度ともにSLRは健側45度に対し15度であった。以上のことから疼痛一度目は腰椎由来の梨状筋症候群、二度目は仙腸関節由来の梨状筋症候群、三度目はL5神経根症と考え治療を行った。立位姿勢では胸腰椎は過後彎し骨盤は前方偏位していた。座位姿勢では胸腰椎が過後彎、骨盤は後傾位となっていた。歩行では胸腰椎は左側屈し、外側荷重となっていた。立位時では骨盤前方偏位を是正すること、歩行では左立脚時の左側への動揺を抑制すること、座位時では骨盤の前傾、腰椎前彎位を保持することを目的に運動療法では下位多裂筋の反復収縮、下位椎間関節の拘縮除去、仙結節靭帯のストレッチ、腹式呼吸、胸椎の柔軟性獲得、左中殿筋、足内筋、腸腰筋の反復収縮を行った。

検討項目は①多裂筋が脂肪変性している状態で、先に述べた機能の獲得は可能なのか、妥当なのか②不可能であれば、どのようにして症状の再発を防ぐのがよいかの二点とした。

脂肪変性は不可逆的なものであり、それを考慮した上で腸腰筋、大殿筋の機能を高めていくことで腰椎の生理的前彎を獲得していくといった意見があがった。一方で、多裂筋の外側部は脂肪変性していないことから、筋肥大を目的に反復収縮を試みてはといった意見もあがった。また、ブロック注射、血液検査、造影剤を用いることで、症状発現部位を鑑別する必要があるといった意見も多くあがった。総括として、MRI上では、椎間板ヘルニアと終板障害をL4/5で認め、SLR15度で大腿後面から下腿後面に疼痛が生じていることから、本症例のしょうじょうには癒着性神経根症が関与している可能性が高いとされた。治療では、神経根部の滑走性を改善し、SLR角度の上昇をはかることが先決だと示された。

以上のことから、多様な症状を有する症例であっても、解剖学や画像所見と照らし合わせていくことで病態の理解に繋がることを今回の症例を通し再確認できた。


(文責:岡西尚人)


症例2 

 症例は、4月上旬に階段昇段時につまずき、スマートフォンを持っていた左手を壁ぶつけ受傷した。5月下旬に疼痛が改善しないため当院を受診し、左中指捻挫、左肘捻挫と診断を受け、受傷8週後にリハビリ開始となった。主訴はGrip動作時痛であった。疼痛は第45中手骨遠位に認めた。同部位に腫脹、圧痛、第45指のIPMP関節のROM制限は認められなかった。VASは受傷時10/10、現在7/10である。疼痛は第5PIPDIP関節伸展、MP関節屈曲、第5PIPDIP関節屈曲、MP関節屈曲、第5PIPDIP関節屈曲、MP関節伸展・強制外転の他動運動にて再現されたが、第5PIPDIP関節屈曲、MP関節伸展、5PIPDIP関節屈曲、MP関節伸展・内転強制、第5PIPDIP関節伸展、MP関節伸展の他動運動では再現されなかった。また、小指自動内転運動で疼痛が再現された。この結果から第3掌側骨間筋が関与しているのではないかと考えた。超音波エコーにて第3掌側骨間筋の長軸像、短軸像を観察したが左右差は認められなかった。運動療法は、痛みが出現しない範囲で手内在筋の収縮運動を行っている。その場では疼痛の軽減を図れたが、来院される時には元に戻っていた。

検討項目としてこの病態をどのように捉えるか、足りない評価項目について、今後行う運動療法についての検討が行われた。

フロアからは、握力が右40kg、左34kgだったことから筋が疼痛に関与している可能性は低いが、握力計のGrip部の間隔を狭くしMP屈曲優位にすることで手内在筋、広くしIP屈曲優位にすることで手外在筋を評価することができるため詳細な評価が必要との意見が出された。また、受傷時の擦傷の有無を確認し受傷肢位の詳細な評価をする必要があるとの意見も上がった。疼痛部位などから深横中手靭帯、橈側側副靭帯や関節包の損傷が考えられると意見が出された。鑑別するには深横中手靭帯に対しては、第45中手骨を掌背側方向や圧迫・離開ストレスをかけ可動性を確認するとの意見が出された。MP関節の橈側背側部での圧痛、MP関節の尺側動揺性、MP関節の内外反ストレステスト、エコーを用いた靭帯・関節包の肥厚像・水腫の有無の観察を行うよう意見が出された。関節包は損傷後に瘢痕組織の肥厚像がみられ柔軟性の低下を示す指標となる可能性があるため、左右差を確認するよう意見が出された。また、受傷後8週経過していること、症例が学生であり細かい作業を頻繁に行うことから、受傷後の周辺組織の柔軟性、滑走性の低下が起因となり二次的な要因で疼痛が出現している可能性が考えられるとの意見が出され、評価として、エコーを用いた第5指の屈筋腱の腱鞘部の滑走性・カラードップラ、深指屈筋・浅指屈筋の圧痛、第45指のピンチ動作を確認するよう意見が出された。

運動療法については、受傷後8週経過していることから、積極的に拘縮除去を行うよう意見が上がった。靭帯、関節包の拘縮の場合、MP関節屈曲位で牽引、回旋操作を行うことで拘縮除去を行うという意見が出された。また手指の拘縮は可動域の改善に難渋する症例が多いため、加療後に痛みの出る手前まで伸長させた肢位(関節面への負担減少)にてテーピングで固定し持続伸張を行うことで可動域の改善が図れるのではないかという意見が出された。

今回症例を通して、病態考察をするために必要な評価を行う必要性を再認識し、組織の修復過程に沿った運動療法の展開が重要であると再認識できた症例であった。

(文責:岸田敏嗣)