236回整形外科リハビリテーション研究会報告

2015.11.21 於:国際医学技術専門学校

症例60歳代 女性 人工骨頭置換術後の可動域制限・鼠径部痛の症例について

 

症例は、半年のリハビリテーションを継続するも、鼠径部痛を主訴とする疼痛の問題が長期残存しており、現在術後8ヶ月となる。

理学的所見では、股関節屈曲、内旋位保持による伸展制限、股関節屈曲制限・屈曲位内転制限、股関節外旋制限が著明である。

疼痛は、鼠径部・大転子後部・股関節周囲・腰背部にも存在し、同一姿勢保持による疼痛(入眠の問題:患側を上にしていられない)、運動時痛(屈曲・伸展・外旋・他動伸展から戻る際)、右腰背部痛(股関節伸展性制限による腰背部の代償 hipspine syndrome)が認められている。症例の困っている訴えは、靴下が股関節を曲げてはけない、臥位にて患肢を上にして寝るとすぐに耐えられなくなって姿勢維持ができない、股関節を自動で曲げると鼠径部が痛い、立つ動作で鼠径部が痛い、椅子に座って触れると大転子後面がぶつかっている感じがする、足を真っ直ぐにして強制して歩行すると鼠径部が痛い、寝る時はベッドで寝られるがクッションを挟んで寝ている。ぐっすりは眠れず何度か痛くて起きることがある。右下にはなれるが、左下にするとクッションが必要か長くいられない。などである。

 

検討項目は、①問題点の再検討(画像所見含め)、②拘縮発生について、③拘縮改善の見込み、④今後の治療継続について挙げさせていただきました。

 

CT画像所見において、外旋位設置であることが指摘された。3DCTに構築して再度医師と相談することが勧められた。

運動療法では、創部の修復遅延や術後疼痛の強かったことも予測され、股関節屈曲、内転、内旋位での拘縮治療も助言された。筋では、小・中殿筋、短内転筋、小内転筋、外閉鎖筋、大腿直筋付着部反回頭の圧痛所見や筋の柔軟性獲得と、屈曲・伸展・外転・内転・外旋の可能な可動域拡大、前術筋による大腿神経・閉鎖神経領域の影響の確認の有無も助言された。

最後に、今回の人工骨頭設置から考えると、外旋可動域は構造上の限界とも考えられ、ゴール設定を医師と再検討し、疼痛が無くなることを目標に許容可動範囲内を見極めながら改善にむけてリハビリテーションを継続していく予定である。

今後、経過、改善、最終結果が見られた時期に、再報告予定である。

 

(文責:橋本貴幸)


症例2 20代男性 腰椎椎間板ヘルニア 胸椎側弯症

症例は、腰椎椎間板ヘルニア・胸椎側弯症と診断された20歳代の男性である。平成2789月にかけて通勤手段を大型バイクに変更した。それ以降、右腰部の疼痛・右殿部~右下肢の疼痛・しびれが出現し、増悪したため10/16に受診した。

X-p撮影では、立位全脊柱前後像にてcobb角 胸椎54.2°、腰椎35.4°で、立位腰部側面像にて腰椎前彎角3°であった。MRI撮像では、矢状断にてL4/5レベルでの椎間板ヘルニア所見が確認され、水平断にて後外側方向への髄核脱出により右の神経根圧迫が疑われた。担当医の意見では、Mcnabの分類でSE型~TE型に該当し、ヘルニア組織が自然吸収される可能性は高く、絶対的手術適応である膀胱直腸障害が認められないことから、3ヵ月間は薬物療法と理学療法の保存療法を試みるとのことであった。生活時の疼痛は、L4レベル以下の右腰部・右殿部・右大腿外側に、しびれは右殿部~右大腿外側・右下腿内側に連続して生じていた。これらは、いずれも体幹前屈により緩解し後屈により増悪した。また、長時間の立位保持、長距離の歩行により症状は増悪し間欠性跛行は約100mで出現した。

投薬の効果としてプレガバリンの服用により疼痛・しびれが、ロキソプロフェンの服用により疼痛が緩和した。また、仙骨裂孔からの硬膜外ブロック注射により疼痛・しびれはいずれも緩解した。

初期の神経学的所見として、右SLR test25°で()、頚部屈曲位で20°であった。

その他、右Boustring signBragard signKemp test ()であった。表在覚は、右母趾背側の軽度鈍麻、筋力低下は前脛骨筋(4-/5)・長母趾屈筋(4-/5)に認め、深部腱反射は正常であった。

体幹可動域は伸展3°・右回旋20°で疼痛・しびれが生じ制限を認めた。右L4S1間の椎間関節に圧痛を認め、PLF testは陰性であった。右のFreiberg testが骨盤非固定で陽性、固定で陰性であった。Pace testは陰性であったが、右の梨状筋・双子筋・坐骨結節外側の圧迫により右殿部・下肢の疼痛が出現した。Newton test変法・Patrick testは左右とも陰性であったが、後方からの仙腸関節ベルトにより症状は軽快し、前方から装着した場合に症状は悪化した。姿勢評価では、静止立位にて右の肩甲骨は外転・上方回旋位にあり、前屈にて右のrib humpが確認された。疼痛緩解を認める硬膜外ブロック注射前後でも立位アライメントに著変はなかった。歩行時には、距離の延長に伴い徐々に体幹の右側屈が強くなる傾向にあった。また、胸椎レベルでの回旋可動域の低下を認めた。

不足している評価項目について、この時期に行うべき治療内容について、脊柱側弯症とヘルニアの合併例に対する注意点について検討された。

フロアからは不足している評価項目として、腰方形筋などの筋緊張評価や末梢性の神経障害有無について評価すべきではないかとの意見があがった。治療内容については、坐骨神経の神経滑走訓練を行うことで、殿部・下肢の疼痛が軽減する可能性を指摘する意見や、期間的にコルセットの着用などにより局所の安静を図るべきではないかとの意見があがった。また、骨盤アライメント・他椎体間へのアプローチ・胸椎可動域訓練などを取り入れるべきとの意見があった。その他、姿勢保持筋の強化、腹圧トレーニングや疼痛緩解する運動方向へのアプローチの実践など多数の意見が挙がった。

以上を踏まえ、今後、主治医と情報共有・協議した上で、継続して評価・治療介入を

行っていく必要があると考える.

(文責:岡西尚人)