247回整形外科リハビリテーション研究会報告

2017.3.18 於:AP名古屋名駅6F
            


大腿骨転子部骨折後屈曲・内旋制限が残存する一症例 

 症例は70歳代の男性で、受傷前ADLは全自立し独歩可能であった。

雪道での転倒により受傷し、大腿骨転子部骨折と診断され、受傷後8日に骨接合術(Anti Rotation Hip Screw : ARHSが外側アプローチで施行され、術後1日より運動療法が開始された。術後4週にてT字杖歩行が自立となり退院し、週1回の運動療法を継続している。術後6週の関節可動域が屈曲70°、股関節中間位での内旋0°、股関節70°屈曲位での内旋0°と制限を認めた。疼痛はなく、end feelfirmであった。

検討項目として、屈曲、内旋制限の原因、足りない評価・治療について検討した。屈曲、内旋制限の原因として股関節前方組織のimpingementと後方組織のtightnessが考えられる。前方impingementは提示された屈曲の動画で確認する限り骨盤の代償があり、骨盤を固定した状態であれば屈曲は40°程度と推察され、X-p所見でもimpingementの要因となる骨アライメントの変化は無い為、impingeする組織があるとは考えにくい。後方組織のtightnessとして受傷時の損傷による深層外旋六筋の拘縮、特に股関節屈曲位でも内旋で緊張が高まる外閉鎖筋の関節包(滑液包)との癒着が考えられる。股関節内旋制限の原因の一つとしてX-p側面像にて前捻角が減少していることが挙げられた。足りない評価としては骨盤固定下(anatomical pelvic plane)での股関節の可動域の評価、手術時の前捻角の確認、画像所見での前捻角、頚体角、下肢長(頚部の短縮:骨頭上端-小転子の距離)の確認、四つ這いでの股関節屈曲、内転による後方組織の伸張性の評価、片脚立位での下肢の安定性の評価、超音波エコーを用いての前方impingementの評価が挙げられた。足りない治療として受傷時の軟部組織の損傷を考慮して骨接合術の固定性を確認しながら股関節内外旋の自動運動による伸張性、滑走性の維持・改善を行っておくべきであった。今後行うべき治療としては深層外旋六筋、特に外閉鎖筋の伸張性、滑走性の改善があげられた。実技として骨盤固定下での股関節可動域の確認、頚体角、前捻角を考慮した深層外旋六筋の治療を行った。本症例の希望であるしゃがみ込み動作については骨癒合を確認しながら行う必要がある。

今回の症例から学ぶことは、術翌日から運動療法を行っていたにも関わらず、強いROM制限が出現したところにある。①運動療法の内容に問題があったのか?②恐らく多くの症例で同様の運動療法を行ってきたことが推測されるが、それでも今回のような制限が出たことは殆どなかったと推察される。ということは今回の症例に何か特別な条件があったと考えるのが妥当であるが、その条件が何か?③その条件が受傷時、術前中後の情報で予測がつくものなのか?④つかないのであれば、今回提示された運動療法をすべての症例にルーティンで行えば今後は予防ができると考えてよいのか?と言った点が挙げられる。今回の症例については、外閉鎖筋を狙ったアプローチにて改善が図れたのかを呈示することで、今後の症例に対する上記の疑問点の解釈に繋がるものと期待する。

(校正者:岸田 敏嗣)







脛骨骨幹部骨折に対する髄内釘挿入術後の関節可動域運動
—足関節の底屈制限に着目した症例— 

症例は70歳代の男性である。診断名は右側の脛骨骨幹部骨折(AO分類42A1)である。受傷機転は転倒であった。受傷4日に髄内釘挿入術が施行され、術後1日から理学療法を開始した。

術後13日の足関節の底屈は右側50度、左側60度であった。右側の底屈は、母趾を屈曲位で測定すると45度、母趾を伸展位で測定すると55度であった。底屈に伴い、下腿遠位の横止めスクリュー挿入部周辺に疼痛を認めた。横止めスクリュー挿入部に対して、Super Sonic Imagine社の汎用超音波画像診断装置Aixplorerを使用し評価を行なった。プローブは154MHzのリニア型を使用した。観察により、横止めスクリューの直上で長母趾伸筋から皮膚にかけて瘢痕性の癒着を認めた。また、横止めスクリューの頭側で長母指伸筋と脛骨の骨膜にかけて瘢痕性の癒着を認めた。

運動療法は長母趾伸筋の癒着剥離のために3つの方法を実施した。1つ目に横止めスクリュー挿入部の皮膚を頭尾側と内外側へ滑走させた。2つ目に同部位の皮膚を頭側に牽引し、母趾を屈曲することにより長母指伸筋を尾側へ滑走させた。3つ目に長母指伸筋の内外側から、長母趾伸筋と脛骨の間に指を挿入するように圧迫を加え、瘢痕組織の滑走を促した。

術後72日の最終評価では底屈は右60度となった。底屈に伴う疼痛も消失した。エコーによる癒着像にも改善が得られた。

 検討項目は①本病態に対する評価と運動療法②スクリュー挿入部での機能障害の経験やその運動療法③その他指摘を挙げた。フロアから①に対してスクリューによる長母趾伸筋断裂の併発に対する評価が挙げられた。単純X線画像やエコー画像よりスクリューの突出を正確に判断することが求められた。また、スクリュー直上で長軸と短軸観察を行い、3次元の動きを把握する必要があった。②に対して長母趾伸筋の収縮練習と徒手的なリフトアップ操作が挙げられた。これはスクリューとの摩擦を回避しながらの癒着剥離操作となっていた。また、スクリューとの摩擦を回避できる背屈位で癒着剥離を行い、底屈運動は最小限にすることで、断裂の併発防止に配慮できることを学んだ。③に対して癒着部が伸筋支帯にかかっているのか、腱鞘なのか腱や筋実質なのか確認することが病態の把握に必要であると指摘を頂いた。

 今回の検討により、インプラントによる腱・筋断裂のリスク評価や、摩擦刺激に配慮した運動療法の方法について知識を深めることができた。

 

(校正者:岡西 尚人)