250回整形外科リハビリテーション研究会報告

2017.8.19 於:AP名古屋 名駅6F
            


長期間に渡り尺骨神経障害を呈している一症例

症例は30歳代の女性である。診断名は頚椎症である。現病歴は2012年2月頃に仕事時に頸部から肩甲帯上部にかけての痛みを訴えられ運動療法開始するも、仕事上の都合により中断と再開を繰り返しており、2016年8月より運動療法再開した。主訴は左の頸部から肩甲帯上部にかけての痛み、上腕後面の痛み、小指の痺れである。
理学療法評価は、姿勢はなで肩、やや円背姿勢をしており、左の肩甲帯アライメントは外転位を呈している。圧痛所見は、斜角筋や小胸筋、SSP、ISP、tm、菱形筋、上腕三頭筋、斜角筋三角、鎖骨上窩、烏口突起下に圧痛を認めた。整形外科的テストはSpurling test、Jackson testは陰性、Roos test、Wright`s test、Adoson`s testは陽性、Tinel signはStruther`s arcade、肘部管、尺側手根屈筋の上腕頭と尺骨頭の筋間に認めた。上肢下方牽引テスト、肩甲帯挙上テストは陽性であった。感覚鈍麻は腋窩神経と尺骨神経に認めた。
運動療法としては頸部や前胸部に直接加療すると強い疼痛を訴えるため、低負荷の腱板筋群・肩甲帯のトレーニングや上腕三頭筋の愛護的なリラクセーションを行った。エコー評価は、矢状面上で肩甲骨肩峰と上腕骨を描出した画像にて、肩峰下端と上腕骨上縁までの距離を算出し、健側と患側、鞄所持の有無で比較検討した。結果は健側と患側に差はあまり認めなかったが、鞄所持の有無では患側で肩峰下端と上腕骨上縁の距離は拡大した。
検討項目として①「病態の解釈について」②「追加したほうがよい所見・治療」③「エコー評価について」を挙げた。
フロアからの意見として①「病態の解釈について」はX-P機能写ではC3/4が過度に屈曲・伸展すること、MRI所見ではC3/4で神経根の圧迫を認めることから肩甲背神経の絞扼由来に伴い肩甲骨が外側偏位しているのではないかとの意見があった。
尺骨神経の症状が出現しているのはX-PにてC7やTh1の棘突起が投影されるほど肩甲帯が下制していることから腕神経叢の牽引力が過度に加わっていることと、尺骨神経は腕神経叢の中でもより下方に位置しているため走行距離が長くなるため症状が出現しやすいのではないかと意見を頂いた。
②「追加したほうがよい所見・治療」では評価として肩甲帯の上方回旋・挙上と下方回旋・外転で症状の軽快と増悪を認めるため、そこでの所見の変化を確認すること、G-H jtの評価が不足していたため詳細な評価、仕事での姿勢や趣味の姿勢、手の置き方を詳細に聴取・再現することといった意見を頂いた。治療では閾値が下がっている部位に直接加療をするのではなく、他部位から運動連鎖を用いることや腹部の緊張を用いて頸部や前胸部の筋緊張を改善するといった意見を頂いた。
③「エコー評価について」では重錘を持つことで、肩甲骨が下方回旋したのか、それとも上肢が下方に牽引されたのかが不明なため定量的な評価とは言えないのではないかという意見を頂いた。

(校正者:林 優)






右TKA後に右膝蓋靱帯断裂を呈した一症例

症例は80歳代の女性で、診断名は右膝蓋靱帯断裂である。既往として関節リウマチ(スタインブロッカーstage分類stageⅢ程度、class分類classⅢ~Ⅳ程度)がある。経過として1996年に左TKA、1997年に右TKA、右THAが施行され、2015年に左人工膝関節の破損と診断された。現病歴は6月上旬に突然、「膝の形が変わった」ことを訴え、当院を受診した。右膝蓋靱帯断裂と診断され、装具加療にて経過観察となった。8月下旬、膝関節屈曲拘縮が強くなり、歩行困難が生じ、ADLに支障をきたすようになったため、運動療法開始となった。家族のHopeはトイレ動作における、装具下での立位保持であった。

主訴は膝が伸びない、立位保持ができないである。圧痛は薄筋、半腱様筋、半膜様筋、大腿直筋に認めた。また内外反ストレステストは陰性であり、Patella altaを呈していた。関節可動域テストでは膝関節屈曲95°、膝関節伸展-40°、足関節背屈15°であった。MMTでは股関節伸展2、股関節外転2、膝関節伸展0であった。ADLは車いすにて一部介助であり、トイレ動作はポータブルトイレにて自立され、移乗はいざり動作にて自立、更衣は一部介助であった。検討項目として、①本症例におけるADLのGOALの設定、②今後行うべき評価、③今後の運動療法の展開について検討が行われた。

フロアからは①本症例におけるADLのGOAL設定において、Hopeや家族構成、家屋構成、介護保険の程度を詳細に聴取することと、残存機能を評価し、補助具を使用して代償させるべきではないかとご指摘をいただいた。また関節リウマチが既往にあるため、負荷などを考えると靱帯断裂や骨折、転倒のリスクも本人と家族に説明が必要とのご指摘をいただいた。②今後行うべき評価では、機能では反対側の膝関節機能、上肢の筋力、可動域の評価が必要であり、ADL面での評価としては断裂前のADLと車いすの自走距離の確認を行う必要があるとご指摘をいただいた。③今後の運動療法の展開については、伸展筋力がMMTで0であり、屈筋群の筋緊張が優位になることから、伸展ROMを獲得するのは難しいが、立位訓練は必要との意見をいただいた。また膝蓋靱帯断裂の原因として既往の関節リウマチや年齢、当時のステロイド療法などを加味すると、骨粗鬆症や靱帯組織の弱化が考えられるため、立位訓練時には転倒するリスクが考えられる。そのため今後の介助方法も家族指導が重要ではないかとの意見をいただいた。またダイヤル式装具の検討、ADLの相談をDr.にするべきとご指摘をいただいた。

本症例を通して、画像所見などから推察すること、患者背景を聴取すること、そして機能面だけではなくADLへつなげること、それぞれの重要性を再確認できた症例であった。

(校正者:林 優)