252回整形外科リハビリテーション研究会報告

2017.11.18 於:AP名古屋 名駅6F
            


アキレス腱に石灰化を認め保存療法を行った一症例

症例は50歳代の女性である。診断名は左足関節拘縮である。現病歴は10年以上前に踵部痛が出現した。1年前に疼痛が増悪し、近隣の病院にてリハビリを行うも改善せず当院受診となった。仕事は工場のライン作業であり、立位での仕事である。主訴は階段降段時痛で踵離地時に出現していた。疼痛は、朝起床後に強いが日中は一旦軽減するが、終業時には増悪するとのことであった。
画像所見はX-pより左アキレス腱に石灰化を認めた。理学療法評価は、外観は両踵部に突出を認める。足関節可動域は、足関節底屈右55°、左55°、背屈右15°、左12°、FHL伸張時背屈右10°、左8°、膝伸展時背屈右8°、左5°であった。圧痛所見は腓腹筋内側頭、FHL、FDL、TP、アキレス腱、踵骨隆起部に認めた。尚、踵骨隆起の圧痛は底屈位で増大、背屈位で減弱した。徒手的な等尺性収縮、遠心性収縮では疼痛は認めないが、片脚ヒールレイズでは求心性、遠心性収縮ともに疼痛を認めた。足部縦アーチの評価として舟状骨粗面を基に座位と立位での高さの変化量を用いて評価した。右は座位6mm、立位5.7mmであった。左は座位6mm、立位5.5mmであった。フットプリントから異常所見は認めなかった。
歩行評価は両側ともにターミナルスタンスで下腿前傾が制限されており、プレスイングでは距腿関節の底屈が抑制されている。右下肢においてはイニシャルコンタクト時に踵接地ではなく、足底外側部接地を認めた。
エコー評価は腹臥位、足部軽度底屈位でアキレス腱停止部の長軸と短軸を描出し、ドップラー反応を観察した。アキレス腱の停止部にて石灰化を認め、長軸・短軸ともにアキレス腱の付着部でドップラー反応を認めた。加えてKeager`s fat padの動態不良が確認されたが、加療後は動態改善を認めた。
理学療法としてはKFPの柔軟性改善、腓腹筋・ヒラメ筋のストレッチ、腓腹筋とハムストリングスの滑走改善、アキレス腱の単軸方向のMobilizationを行った。加えてヒールパットを作成、キネシオテーピングによる腓腹筋のサポートテーピングを実施した。
検討項目として①疼痛の解釈について「石灰化が疼痛に影響を及ぼすのか」、②今後の治療方針として「追加すべき評価・治療」を挙げた。
フロアからの意見として、①「石灰化が疼痛に影響を及ぼすのか」について、石灰化は損傷や病変が生じた組織に対して起こる現象であり、石灰化自体は疼痛とは関係ないのではないかと意見があった。エコー画像から左踵部の石灰化では超音波ビームが深層まで届いていないことから古く、硬い石灰化と考えることができ、石灰化が完成されているため疼痛とは関係ないと判断できる。右踵部の石灰化はまばら状で超音波ビームが深層まで届くため、形成段階であることを示唆できる。その為、血管増生反応が周囲で生じており、疼痛を拾いやすくなっている状態と考える事が出来るのではないかと意見を頂いた。
②「追加すべき評価・治療」については、アキレス腱付着部周囲解剖には皮膚・皮下滑液包・アキレス腱・脂肪体・FHL・踵骨後方滑液包などが存在しているので、圧痛は背屈位と底屈位で表層組織の緊張を変えて詳細に確認することが重要であるとの意見が上がり、実際の実技について説明があった。更に距骨下関節の可動性や前足部の機能、股関節の筋力や可動域など全体像を把握するために詳細な評価をすることが必要であるとの意見が出た。加えて、Dr.と協力してInjectionを効果的に用いることで痛みがどこで生じているのかを判断する材料になりうるとの意見も上がった。
仕事量(負荷量)の増大により疼痛が増悪しているので、まずは局所安静を図る必要がありインソールは良い適応であると思われた。その上で、存在している組織間の滑走障害や筋の機能障害に対して積極的な運動療法を実施する必要があるとまとめられた。

(校正者:岡西 尚人)








歩行時に膝関節前外側部のひっかかり感と疼痛を認めた変形性膝関節症症例

誘因なく膝関節に疼痛が出現し、徐々に疼痛の増悪と膝関節の運動制限が著明となってきたため某整形外科クリニックを受診した。外側型の変形性膝関節症と診断され、手術を勧められたが保存療法を選択され、運動療法開始となった。約20年前に転倒歴があり、ガラス瓶で膝関節上外側部を切創し十字靭帯損傷も合併したとのことだが詳細は不明である。主訴は、疼痛による膝関節屈伸の困難である。膝関節可動域は、伸展-35°、屈曲60°と制限を認めた。運動療法により約半年で疼痛は消失し、可動域の拡大を認めたが本人の希望により、週一回のペースで約2年半経過観察を行っていた。
最近、誘因なく歩行の立脚中期から後期において膝関節前外側部にひっかかり感と疼痛が生じるようになり、再評価を行った。 単純X線画像から3年前と比較し、大腿骨外側顆の骨棘が形成されていた。歩容はknee-inを呈していた。膝関節可動域は、伸展-10°、屈曲105°であった。MMTは、膝関節伸展が4レベルであった。圧痛は外側広筋、中間広筋、大腿骨外側顆骨棘周囲に認めた。超音波画像診断装置(以下:エコー)では、大腿骨外側顆骨棘上で外側広筋・中間広筋の停止腱膜の滑走障害を認めたが、同部位での血流増生像は認めなかった。評価結果よりひっかかり感と疼痛の原因として、外側広筋・中間広筋の停止腱膜の滑走性低下が大腿骨外側顆に形成された骨棘との接触圧が上昇しているためと考えた。運動療法として、中間広筋と外側広筋の柔軟性および伸張性の改善を目的に筋の浮き上がりおよび横方向へのgliding操作を行った。運動療法後は引っかかり感と疼痛が消失するも、リバウンドを認める状態であった。
検討項目は、①ひっかかり感の原因について、②今後の治療方針についての2点であった。フロアーより、ひっかかり感が出現するタイミングでのエコー画像を観察することで病態が把握できるため、ステップ動作や歩行の立脚中期から後期で評価してみてはどうかとの提案があった。今後の治療方針については、若年者ではあるが早期に人工膝関節全置換術を行うべきという意見が多数あった。その理由として、一般的な内反型の変形性膝関節症に対する手術と異なり、外側組織の付着部は、外側側副靭帯など停止部の幅が狭く、リリースが難しいことからアライメントの是正が困難なことが挙げられた。また、外反変形により脛骨の捻転や脛骨外側関節面の陥没が進むと一般的なコンポーネントでの安定性が得られにくくなる可能性が高いとの見解が示された。
現段階で患者は手術を拒否されているが、主治医と十分に協議した上で、手術のタイミングが遅くなることで手術内容が複雑になること、術後の機能回復に時間を要することなどを医師より十分に説明を行うことで患者に理解を深めてもらう必要がある。
手術を促しつつ、今後の運動療法としては、膝関節の伸展可動域拡大ならびに大腿四頭筋の機能改善が不可欠である。また膝関節の伸展制限については、過去の転倒時に脛骨への後方へのストレスが加わったことで後十字靭帯損傷を合併し、その影響による後外側組織の伸張障害による制限が生じていると考えられ、治療対象にすべきとの意見が挙げられた。
変形の状態から考えられる手術内容などを十分に理解した上で、医師と協議することで、本症例に必要な治療方針が提案できることを再認識させられる症例であった。

(校正者:猪田 茂生)