255回整形外科リハビリテーション研究会報告

2018.3.17 於:AP名古屋 名駅6F
            


肘頭骨折後可動域の改善に難渋している一症例

症例は40歳代女性である。職業は教師で右利きである。某日、自転車から転倒し肘から地面に落下し受傷。A病院の緊急外来へ受診し右肘頭骨折と診断された。その後、B院へ転院し、受傷後5日目に肘頭骨折に対し、Tension band wiringを施行した。その後、受傷後19日目に当院へ転院し、運動療法開始となった。
受傷時のレントゲン画像より肘頭の転移を認めMayo Clinicの分類でTypeⅡ~Ⅲにあたると推察された。Ope後レントゲン画より尺骨滑車切痕と上腕骨滑車の適合性不良が認められた。
B院退院時のROMは肘屈曲90°伸展-10°前碗 回内10°回外80°であった。当院初診時理学所見では屈曲85°伸展-40°前腕 回内-10°回外80°と可動域の低下が認められた。また屈曲時には肘頭から上腕骨内側上顆周辺に、回内時には前腕遠位の橈側に認められた。
手術創の皮膚の滑走性は乏しく、前碗背側から橈骨頭周辺には腫脹を認めた。感覚障害、手指、前腕の筋力低下などの神経学的所見に明らかな低下は認められなかった。圧痛所見は内側上顆、MCL後斜走線維に強く認めその痛みは屈曲時痛と一致していた。エコー所見より上腕三頭筋内側頭の深層の癒着が認められた。橈骨頭周辺での回旋動態を観察したが輪状靭帯の癒着や滑走性低下は認められなかった。
本症例は屈曲時その後、週4-5回の治療頻度で加療を行うも1日程間隔が空くことでROMのリバウンドを認め可動域の改善に難渋していた。前腕 回内制限は大きな変化は認めず、可動域制限に変化が見られなかった。
本症例の回内制限因子と可動域制限の解釈、肘頭骨折術後の尺骨滑車切痕と上腕骨滑車の適合性不良が及ぼす影響について、本症例に対しての有効な運動療法及び追加すべき評価項目について検討がなされた。
 フロアからの意見では、レントゲン画像から粉砕骨折であるため少なからず受傷時にMCLの損傷があったのではないかとの意見が上がった。理学所見としては屈曲位での外反ストレスなどで疼痛や不安定性を確認することで靭帯損傷の有無を判断することが有効ではないかとの意見が上がった。回内制限に関しては回内制限因子となりうる軟部組織に伸張ストレスを加えて可動域の増減を確認してはどうかとの意見が上がった。受傷時のレントゲン画像より受傷形態からTension band wiring法では固定性に不安が残ることや屈曲時の疼痛が強いことから骨折部の疼痛が考えられた。また橈骨頭の形状にも違和感があるため橈骨の骨折があったのではないかとの意見も挙げられた。現状ではCTによる情報が無いためこれらの所見を明確にするためにも一度Dr.へコンサルし骨折部の精査を行う必要性を指摘された。前腕回内制限に関しては橈尺骨のalignment不良からくる影響もありうるが橈骨粗面周辺の軟部組織の柔軟性が低下することにより起こる可能性もあるためエコーによる動態観察を行うことで原因となるか判断するよう指摘があった。
運動療法としては治療用に装具を作成し持続伸張も用いながら行っていくことで屈曲可動域の獲得を図っていくことや尺骨滑車切痕のalignmentを考慮し牽引をかけながら屈曲可動域訓練を行っていき治療前後にMCL周辺の血流増生をチェックしストレスがかかりすぎていないか判断しながら進めていくよう意見が上がった。受傷時のレントゲン画像から得られる情報と理学所見から症例の病態や受傷部の修復状況を把握した上で治療を行う必要性を感じた症例であった。

(校正者:赤羽根 良和)




膝離断性骨軟骨炎の一症例

症例は10歳代の男子中学生で主訴は、5年前から続くサッカー中の膝の引っかかり感や痛み、抜けるような感じである。ここ最近は歩行でも症状がありここ最近症状が強い傾向にあるため、当院に受診しリハビリテーション開始となった。医師の診断ではCT、MRIより内側顆部の膝蓋大腿関節面に軟骨欠損が見られ、離断整骨軟骨炎という診断であった。損傷は軟骨下骨までは達しておらず、緊急に手術をする状況ではないが、いずれ手術は必要な状態であるとのことであった。早期に手術をしても良い状況であったが、本人希望より4月からリーグ戦が始まり夏まで大会が続くため、夏までプレーしたいということで、その期間中は保存療法で症状を軽減しながらサッカーをしましょうという方針となった。既往歴としては両側の内側半月板損傷(著名な損傷なし)がある。
リハビリテーション開始時の理学所見としては、圧痛は大腿骨膝蓋面内側、内側裂隙、外側裂隙(軽度)、膝蓋骨尖、MCL、MPFL、MPTL、MM(後節)にそれぞれ確認された。整形外科的テストは離断性骨軟骨炎のテストでもある Wilson’s test が陽性(脛骨内旋時に著名に圧痛あり)で関節水腫は若干見られる状況であった。また、McMurrayやApleyなど内側半月板所見が確認されたが、痛みは経度でクリック音が少し気になる程度であった。膝関節の可動域は健側患側共に屈曲140°、伸展0°で左右とも深屈曲可動域制限が確認された。膝関節を動かした際は、他動では症状は無いものの自動で動かすと著名に症状が出現する状況であった。膝蓋骨の圧迫操作による症状の出現傾向は、coronary rotation を加えて試して見たがどちらの回旋も症状は強く出現し、傾向としては確認しにくい状況であった。
検討項目としては、手術適応と思われる患者に対して、夏までプレーを続けさせるためにどのような対処をすべきか、またテーピングなどで症状を軽減させることは可能か否かについて検討していただいた。
検討後、まずそもそもの疼痛発現組織は何か、そして膝蓋大腿関節の圧上昇を防ぐために必要な機能改善は何か、というところを主な意見としていただいた。
疼痛発現組織について、画像上まだ軟骨下骨まで損傷が及んでおらず、何の組織の痛みで症状が出現しているのかがまだ不明である。おそらく軟部組織性(滑膜増生など)の症状も絡んでいる可能性があるので、その部分を解剖・機能解剖をもとに評価をしていくことが今後必要であると指摘をいただいた。
膝蓋大腿関節の圧上昇を防ぐことに関して、後方重心のアライメントが重要なポイントとしてあげられた。その後方重心のアライメントを評価する上で、大腿筋膜張筋や外側広筋の硬さ、足関節の背屈制限や過回内、大腿四頭筋(とくに大腿直筋)の硬さなどの柔軟性低下、足部内在筋機能低下、前足部への荷重不足(とくに母趾列)などがポイントとしてあげられるので、これらの部分を中心に機能評価を行い、後方重心を中心とした膝伸展機構への負担が増大する要因を探ることが大事であると意見をいただいた。
 もし症状が強く、膝関節自体を評価することが困難な状況であれば関節注射(キシロカイン)で痛みが引くかなどの検査を試すのも一つの手であると意見をいただいた。
今後、手術を実施した際に、現状で残存している柔軟性低下やアライメント不良などを残しておくと、手術後もまた同様の症状が出現する可能性があるので、再度評価を実施した上で明らかとなった機能障害をしっかり改善しておく事は、治療の重要なポイントとなる。

(校正者:岡西 尚人)