259回整形外科リハビリテーション研究会報告

2018.10.20 於:AP名古屋 名駅6F
            


SNAC wristに対して舟状骨除去術と手根骨固定術を施行した一症例

症例は50代の男性である。約20年前、コンプレッサーの蓋を開けた際に手関節背屈と前腕回外が強制され受傷した。手関節捻挫と診断され様子をみていたが、疼痛が増悪したため某総合病院を受診したところ単純X線所見より、橈骨茎状突起および舟状骨を中心とした手根骨の変形を認め、SNAC wristと診断された。SNAC wristに対して舟状骨除去術と手根骨固定術が施行された。術後4週間はギプス固定が施行され、ギプス除去後某整形外科クリニックにて運動療法が開始となった。主治医より、手関節の自動運動、手指の自他動運動が許可されており、2週間後より手関節他動運動も開始予定である。術後の単純X線所見では舟状骨が除去され、月状骨、三角骨、有頭骨、有鈎骨間がアキュトラックミニで固定されていた。理学所見より手関節全体に浮腫を軽度認め、疼痛は手関節の母指側でNRS5/10、背側と小指側で3/10であった。圧痛は術創部、前腕屈筋群、伸筋群、タバコ窩に軽度認めた。自動ROMは手関節の掌背屈0°、橈尺屈5°、前腕回外20°、回内70°、MP関節屈曲60°と著明な制限を認めた。握力は、健側37kgに対して患側8.6kgであった。運動療法として、手関節を固定した状態で手指を伸展させるようにして前腕屈曲屈筋群のストレッチング、術創部のモビライゼーション、前腕屈筋群と伸筋群のダイレクトストレッチングを実施した。加療3回目で浮腫は軽減し、自動ROMは手関節の掌屈5°、背屈20°、橈尺屈10°、前腕回内外80°、MP関節屈曲60°と拡大したが制限は残存していた。握力は15.9kgであった。
検討項目は①現時点で追加すべき評価、治療、②他動運動許可後に注意すること、③最終目標(ROM、握力など)についてであった。
フロアからは、手内筋の伸張性やCM関節の可動性、MP関節伸展のROMが現時点で追加して行なう評価として挙げられた。また手術侵襲を考慮し、創部や伸筋腱の滑走性についても評価し、他動運動開始時までに橈骨手根関節以外の関節可動域や創部及び腱の滑走性を獲得しておくことが大切であるとの指摘があった。術後成績については、ROMが健側比50%前後、握力が70〜80%との報告があり、そこを目安に運動療法を進めるべきであるとの意見があった。今後は、OAの進行や不安定性などについても十分に検討していく必要があるため、定期的に単純X線撮影や機能写で観察していく必要があるとの意見があった。
症例検討をとおして、手術の方法、手術所見等を考慮し、現在行ってよい評価、してはいけない評価を明確にする必要性を再認識することができた。また今回の症例は、運動療法に関する報告が散見されないため治療成績について今後報告していただきたい。

(校正者:山本 紘之)




左三果骨折後術後に母趾末端部にしびれが出現した一症例

症例は、30歳代の妊娠7ヶ月の女性である。自宅玄関にて転倒した際、足関節に底屈・内反強制が加わり受傷した。某総合病院にて左三果骨折と診断され、受傷4日後に内果骨折はtension band wiring、外果骨折はfibra plateによる観血的整復固定術が施行された。術後約1ヶ月にて外固定が除去され、術後2ヶ月半後に某整形外科クリニックを受診し、運動療法が開始となった。Needは、3ヶ月後に出産予定のため早期の独歩獲得である。術後の単純X線画像にて、tension band wiringのpinの尖端が脛骨後縁より後方に突出していた。
初期評価時は、内果後方近位部の疼痛及び母趾の底側及び背側のしびれの出現により荷重が困難であり、松葉杖にて完全免荷の状態であった。足関節背屈可動域は−10°であり、母趾の足底及び背側のしびれが増悪すると共に内果後方近位部に疼痛を認めた。エコーにて同部を確認するとpin突出部と一致しており、FDL腱及びTP腱が干渉している様子が観察された。また、pin先端部周囲に低エコー像と血管増生反応を確認した。母趾の足底及び背側には、安静時のしびれと感覚鈍麻が出現しており、弾性包帯にて足部を圧迫して挙上位を保持するとしびれが軽減し、裸足で下肢を下垂位に保持するとしびれが増悪した。運動療法は、pinトラブルを考慮して長母趾屈筋の滑走訓練に加えて、5㎝の補高を作成し、荷重訓練を実施した。加療約1ヶ月後、安静時のしびれは軽減したが感覚鈍麻に変化がなかった。足関節背屈可動域は10°と拡大したが、内果後方近位部の疼痛が残存していた。
検討項目は、①安静時のしびれ・感覚鈍麻の解釈、②FDL腱及びTP腱とpinトラブルを考慮して実施している運動療法の妥当性と今後の治療方針について、③独歩の獲得へ向けて行うべきことの3点であった。
フロアからは、①に関して循環障害、神経損傷、神経絞扼・癒着などの要因が混在している可能性があるとの意見が挙がった。循環障害には浮腫管理を徹底し、神経損傷もしくは絞扼部位・癒着部位を同定するためには、詳細に脛骨神経に沿ったTinel signを評価する必要があるとの指摘があった。②に関して、エコーではFDL腱及びTP腱の滑走動態を短軸においても観察し、理学療法評価ではFDL腱の持ち上げや外側へ徒手的に移動させての背屈動作での疼痛の変化を確認し、pinに対して腱がどのような動きで干渉しているかを確認する必要があるとの意見が挙がった。背屈時の疼痛がpinトラブルによる影響であれば、積極的に背屈可動域訓練は行わず、③にも関連するが歩行時は補高を調節し、ADLで荷重ができる環境を整える必要がある。これより、FDL腱及びTP腱が適度に滑走することでcystが形成され、疼痛軽減が期待できるのではないかという意見があった。
追加すべき運動療法として、pin抜去時に関節拘縮を残存させないために皮切部の柔軟性及び滑走性の獲得やヒラメ筋・長母趾屈筋などのdirect stretchingに加えて、距骨下関節の可動域訓練、後果間靭帯とFDL腱間での滑走訓練も施行していく必要性が挙げられた。
検討結果を踏まえ、神経由来の症状に対しては、Tinel signを詳細に評価し病態を明確にする必要があった。また、腱とpinとの関係性をエコー及び徒手操作を駆使して評価を行い、いかにpinトラブルを考慮しながら関節拘縮の予防と荷重コントロールを実施していくかが重要であると再認識できた症例であった。

(校正者:山本 紘之)